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相続登記 4月から義務化、新制度を周知 静岡県司法書士会

 不動産登記法の改正により、4月から相続登記申請の義務化が始まる。正当な理由がなく申請を怠ると過料が発生する可能性もある法改正で、静岡県司法書士会などは昨年施行された「相続土地国庫帰属制度」に続き所有者不明土地や空き家発生を予防する方策として制度周知へ力を入れている。

相続登記申請義務化を前に県司法書士会が開いた無料相談会=2月中旬、静岡市
相続登記申請義務化を前に県司法書士会が開いた無料相談会=2月中旬、静岡市

 毎年2月を相続登記強化月間と定め、県内各地で無料相談会を開いている同会。法改正直前の今年は、関心の高さと広報に力を入れたことで、相談枠が早々に埋まる会場も見られた。静岡市内の会場を訪れた焼津市の70代女性は息子夫婦に将来土地を引き継ぐため「自分たちがしっかりしているうちにルールを知りたい」と義務化に伴う手続きなどを同会所属の司法書士に細かく質問した。藤枝市の60代男性は、亡くなった父親が40年以上前に購入した北海道の土地について相談。土地の存在自体は認識していたが、評価額の低さもあり登記変更はしていなかったと言い、「いつかやらなくちゃ、と思っていた。義務化を契機に名義を自分に変える」と話した。
 所有者不明土地や建物の存在は、公共事業や災害復興の足かせにもなる。能登半島地震では、倒壊した家屋が相続登記されていないために、行政が独断で解体や撤去ができず作業に支障を来すケースが報告されている。県内でも、高齢化や人口流出の影響で対象の不動産が増え続けていて対策は急務だ。静岡地方法務局の蔦啓一郎局長は「相続人が複数にわたる場合は戸籍収集や合意形成などに時間を要し、手続きが煩雑になる。登記を先送りにさせず、所有者と公共、双方の利益のため広報を徹底したい」と強調する。
 今回の法改正では、施行日(4月1日)以前に相続した未登記の土地も義務化の対象。最短で2027年3月31日の義務履行期限までの3年間で登記しなければならない。同会の原田研次副会長(48)は「土地の相続人が誰か判明するだけでも意味がある。不動産を『負動産』として次世代に禍根を残さぬよう、いま一度親族や関係者で話し合ってほしい」と訴える。
 (社会部・薬袋貴信)

相続登記義務化のポイント
 ○相続で不動産取得を知った日から3年以内に登記(名義変更)する必要がある
 ○正当な理由なく3年以内に相続登記を怠ると、10万円以下の過料に処される可能性がある
 ○2024年4月1日以前に発生した未登記の不動産も申請義務化の対象
 ○遺産分割協議中など3年以内に登記ができない場合、法務局に自分が相続人であることを告げる「相続人申告登記制度」を新設。この制度を利用すれば、申請義務を果たしたと見なされ過料が科されることはない。ただし、正式に相続人が確定した後には登記が必要

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