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ケアプラン作成、AIが支援 西山病院グループ(浜松市西区)【DX最前線】

 医療法人社団一穂会の西山病院グループ(浜松市西区)が今年3月、高齢者のケアプラン(介護サービス計画)作成を支援する人工知能(AI)システムを導入した。ケアマネジャー(介護支援専門員)の経験や技術とデータ分析を掛け合わせることで、ケアプランの精度向上や介護現場の負担減につなげる。

西山病院グループが導入したケアプラン作成支援のシステム。1年後の状態予測や必要な支援内容を示す=4月、浜松市西区
西山病院グループが導入したケアプラン作成支援のシステム。1年後の状態予測や必要な支援内容を示す=4月、浜松市西区

 介護関連のスタートアップ企業シーディーアイ(東京都)が開発した「SOIN(そわん)」は、約50万件の介護データ学習に基づき、要介護者向けの支援メニューを提案する。画面上で身体機能や疾患履歴など約70項目を入力すると、数値やグラフを用いて1年後の状態予測や改善に向けた支援方法を示す。
 西山病院グループでは、ケアマネ1人あたり30~40人の利用者を担当する。ケアプラン作成は個人の経験や知識に基づく要素が大きいため、提案内容の標準化が必要とされてきた。各業務のデジタル化を図る中で、そわんの活用を決めた。
 導入後は「週3回の訪問介護が必要」「歩行機能維持のために週1回外出すべき」のような提案を参考にしながら、プラン策定に取り組むことが可能になった。ケアマネの加藤あい子さんは「データに基づく提案と自分のプランを比べることで、得られる気付きは多い」と話す。利用者や家族とプランを話し合う際、詳細なデータを示すことで納得を得られやすくなる面もあるという。
 そわんの販売代理店ベルメディカルケア(静岡市清水区)によると、静岡県内初の導入事例。担当者は「AIの力を借りることで、利用者との対話やリハビリ支援など、人にしかできない業務により集中できる効果が期待できる」と話す。

記者の目 人材育成にも活用
 人手不足に悩む介護・医療現場は多い。静岡労働局によると、4月の「福祉・介護」の職業別有効求人倍率は3.88倍と高い状態を維持している。それだけに、やりがいや意欲を持って働く職員の定着に向けたデジタル技術導入は不可避といえる。
 項目を入力するだけで一定の判断材料を示すシステムは、新人のケアマネジャーの研修にも活用できる。暗黙知を言語化するAIは、負担軽減が求められる介護の他分野でも活用が進みそうだ。

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