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清水町の高齢者対象事業 地域とつながり健康に【東部 記者コラム 湧水】

 清水町に住む65歳以上の高齢者を対象に、町内の体育施設の使用料が無料となる静岡県内初の「笑街健幸(しょうがいけんこう)パスポート事業」が10月からスタートした。認知症の人やその家族の支援に取り組む「チームオレンジ」も9月に設置された。一連の取り組みが町民の健康増進や地域の連携強化につながる契機となってほしい。
 町福祉介護課によると、町内の要介護認定者のうち、認知症と診断されている人は2022年度時点で34・8%。国や県よりも10ポイントほど高い水準にある。また、物忘れの症状が目立たない「隠れ認知症」で、医療機関を受診していない人がいる可能性もある。
 政府が19年に決定した「認知症施策推進大綱」では、「共生」と「予防」が軸に置かれている。共生では、認知症の人が地域と協力して尊厳を持ちながら暮らし続けることができる社会を目標に掲げ、予防では運動不足の解消や社会参加による孤立の解消で発症や進行を遅らせることを目指している。
 高齢化が進む中、高齢者が生き生きと過ごすためには、適度な運動で認知症を予防し、地域とのつながりを構築することが重要だ。運動施設の使用料無料化で高齢者がスポーツに取り組むハードルは下がるが、町民が足を運びたくなるようなイベントの開催や、施設に通いやすくなる仕掛けづくりなど、さらに一歩踏み込んだ工夫を求めたい。
 町はこのほか、9月の世界アルツハイマー月間に合わせて、町内4書店と連携し、認知症の理解を深めるための特設ブースを各店舗に設置した。民間の書店と協力した取り組みは、県内で唯一だという。書店の担当者は「町の担当者との話から、認知症という言葉の強さで、発症しても周囲の人に知られたくないと思ってしまうことを知った。助け合うことができれば」と思いを語った。
 誰もが高齢者となり、認知症やアルツハイマー病になる可能性がある。政府が求める「共生」は、地域ごとの具体的なイメージがなければ実現は難しいだろう。若い世代をも巻き込んで対策を進め、老後も安心して暮らせる町づくりができるか。今後を注視したい。
 (東部総局・日比野都麦)

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