テーマ : シニア・介護・終活・相続

介護人材不足「解決道筋を」 事業関係者 若手確保や待遇改善要望

 統一地方選前半戦の投開票が9日に迫る。介護など社会保障の充実を争点と捉える有権者も多い中、具体性のある議論は届いてこない。急速な高齢化で介護人材の需要は高まる一方で、担い手不足は常態化。県内の事業関係者からは「現場の負担は重くなるばかり。解決の道筋を示してほしい」との声が上がる。

高齢者宅を訪問し、入浴介助などにあたる森田裕美子さん。笑顔でコミュニケーションを取る=3月下旬、静岡市清水区
高齢者宅を訪問し、入浴介助などにあたる森田裕美子さん。笑顔でコミュニケーションを取る=3月下旬、静岡市清水区
県内の介護職員不足の見通し
県内の介護職員不足の見通し
高齢者宅を訪問し、入浴介助などにあたる森田裕美子さん。笑顔でコミュニケーションを取る=3月下旬、静岡市清水区
県内の介護職員不足の見通し

 「このままだと10年後、ホームヘルパー(訪問介護員)はいなくなってしまうのではないか」。静岡市清水区で訪問・通所介護に関わるサービスを提供する「くらしサポート」代表の成岡敏雄さん(76)は危機感を募らせる。
 同社で働くヘルパーのほとんどが50代か60代。若い人材の確保や定着が年々、困難になっている。「賃金の改善を国に強く要望してほしい。県や市町でも介護職を目指す学生への奨学金、新規就職者への報奨金の支給など、できることはある」と候補者に要望する。
 ホームヘルパーとして18年働く同社の森田裕美子さん(58)は「若い世代には利用者宅を訪問し、1対1で介護する責任の重さにプレッシャーを感じている人も多い」と話す。「事業所の枠を超えた研修などをもっと充実させれば、技術や知識、仲間を得て自信を持って長く働いてくれるのではないか」と若手を育成する場の創出を求める。
 介護の担い手不足は県も大きな課題と認識。無資格者の就労支援や離職者の復職支援、外国人材の採用、定着支援などの施策を進める。職員の負担軽減に向けた業務効率化のモデル事業やICT導入の補助にも予算を振り向ける。ただ、「いくら業務を効率化しても、最終的には人の確保が重要」(県内の社会福祉法人関係者)との声もある。
 全国で介護事業を展開する聖隷福祉事業団(浜松市中区)の鎌田裕子理事(人事企画担当)は「人材確保の支援施策は国から自治体レベルまでさまざまにあるが、使う方からすると複雑で分かりづらい。精査して効果的に使うための現場負担は重い」と話す。
 2024年度には介護保険制度の改正が控えるが、職員の待遇改善は利用者負担増とも関係するため、統一地方選を前に議論が停滞したとの見方もある。介護職が担うべき業務の明確化も進まず、現場の多忙感は解消されていない。鎌田理事は「このままでは介護職のキャリアデザインがままならず、魅力ある仕事になりきれない。課題と政策を整理し、分かりやすい情報発信と実行に努めてほしい」と強く望む。
 (生活報道部・大滝麻衣、西條朋子)

 <メモ>県内の介護職員数は増加傾向が続いているものの、今後大幅な不足が予測される。県の推計によると、2025年度には必要数約6万3千人に対して約5800人、40年度には同約7万2千人に対して約1万2千人が不足する見通し。県内の介護関連職種の有効求人倍率は17年度以降4倍を超え、慢性的な人手不足に陥っている。

いい茶0

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