テーマ : シニア・介護・終活・相続

「想定外」少ない年金 仕事探す定年退職者 生活維持へ余儀なく【70歳の壁 シニア雇用を考える】

 「年金が思ったほどもらえない。仕事をしないと」―。定年退職後にパート・アルバイトを掛け持ちしたり、探したりしている県内の60、70代が口をそろえる。全国調査でも、年金をもらえるはずの世代で多くの人が仕事をしたい理由に「生計維持」を挙げ、老後生活を支えるはずの年金に頼れず、働くことを余儀なくされる実態が浮かび上がっている。県内のシニアからも年金額への不満と生活不安の声が聞こえてくる。

求人票を見て仕事を探す県内のシニア求職者。高齢者の働き方は、もらえる年金額と密接に関係する
求人票を見て仕事を探す県内のシニア求職者。高齢者の働き方は、もらえる年金額と密接に関係する
少子高齢化に伴う1人当たり年金受給額の変化(イメージ)
少子高齢化に伴う1人当たり年金受給額の変化(イメージ)
求人票を見て仕事を探す県内のシニア求職者。高齢者の働き方は、もらえる年金額と密接に関係する
少子高齢化に伴う1人当たり年金受給額の変化(イメージ)


 リクルートが3月に実施した全国意識調査(複数回答可)によると、70代前半の約4割が「(できる仕事の)年齢幅が狭い」と回答する一方、約3割が仕事をしたい理由として「生計維持」を挙げた。60代後半も男性の42・2%、女性の34・2%が「生計維持」と答えた。

 ■「よく知らず」
 63歳から警備のアルバイトを続けている県内の元自営業の男性(75)は今年に入り、別の仕事も見つけてダブルワークを始めた。もらえる国民年金は毎月5万円弱で、アルバイト収入なしの生活は難しいという。
 老後資金は自分なりに蓄えてきたつもりだが、年金をもらい始めて「税金や社会保険料が引かれ、もらえる額が意外と少ない」と気付いた。「年金のことをよく知らなかった。見通しが甘かった」と後悔した。

 ■重い社会保険料
 厚生年金が支給されて比較的優遇されていると言われる元サラリーマンからも同様の声が上がる。定年後の継続雇用が終わり、4月から年金をもらい始めた県内の男性(65)は受給額にがくぜんとした。雇用先の企業がこれまで払ってきた介護保険や医療保険の保険料分も自分で払うことになり、もらえる年金から大幅に差し引かれていた。
 50代の時に会社の研修で聞いたはずの受給額とも大きく異なっていたという。「自分は保険料をしっかり払ってきたのに、上の世代の受給額と随分違う」と年金の手取り額に不満を漏らし、再就職を模索する。

 ■掛け持ち模索
 コンビニでアルバイトする男性(70)はダブルワークに向けて二つ目の仕事を探している。若い頃から年金保険料は欠かさず払い続けたのに受給額は「平均未満」。残った住宅ローンや介護保険料などの支払いが重くのしかかり「年金だけで生活は無理」と嘆く。
 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の小田切克子さん(浜松市中区)によると、国民年金だけの自営業者のほか、現役時代に低年収だった人は受給額が少なくなる傾向があり、死別や離別で単身世帯になった人も夫婦世帯より少なくなりやすい。70代に関しては「まだ住宅ローンを抱えていたり、子どもの教育費がかかり過ぎたりしたことで、老後資金の準備が十分でない人が一定程度いる」と現状を説明する。

いい茶0

シニア・介護・終活・相続の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞