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介護予防に「民」の発想 24年度、静岡市が委託事業 成果に応じ「報酬」変動

 静岡市は2024年度から、新たな官民連携の事業手法「成果連動型民間委託契約方式(PFS)」を活用した介護予防促進事業に着手する。PFSは行政課題に対応した成果指標を設定し、達成状況に応じて委託事業者への「報酬」の額を変動させる仕組みで、同市では初の導入。介護を必要としない65歳以上の市民に外出や社会参加を促すアイデアを民間から取り入れ、要支援・要介護認定者数と介護サービスにかかる経費の削減につなげる。28日までの関係者への取材で分かった。
静岡市の要支援・要介護認定者数と介護サービス経費の推移
 事業の対象は、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち、就労や社会活動をしていない市民約3万1千人。外出や社会参加は介護予防につながるとして、委託事業者が開催するイベントや憩いの場への参加者数などを成果指標に定める。具体的には、イベントに月1回以上の頻度で3カ月以上継続して参加した人数と、参加したものの3カ月未満しか続かなかった人数について、それぞれ500人と900人に設定する予定。指標の達成度に応じ委託費が支払われる。
PFSを活用した静岡市の介護予防事業の概略
 市は事業費を24年度当初予算案に盛り込む方針。26年度まで3年間実施し、事業効果を評価検証した上で、継続の可否を判断する。事業の評価は第三者機関に委託する。
 同市では介護が必要な人や介護サービスにかかる経費が増加傾向にある。要支援・要介護認定者数は18年に3万8192人だったが、22年は4万1796人で3604人増。介護サービスの経費は18年から22年の5年間で57億円増額した。介護サービスを提供する人材も不足していて、介護人材の需要と供給のギャップが25年には1200人に広がる見込みという。
 市はこれまで、介護予防として高齢者対象のミニデイサービスや健康体操の教室などを行ってきたが、改善には結びついていない。新規性や継続性の高い介護予防事業の実施が必要と考え、民間事業者の柔軟な発想を生かせるPFSの導入を決めた。難波喬司市長は11月下旬、内閣府主催のPFS首長セミナーにパネリストとして参加し、事業の内容や期待する効果を説明した。
 (政治部・池谷遥子)

 成果連動型民間委託契約方式(PFS) ペイ・フォー・サクセスの略。自治体が民間事業者に委託する事業について、解決すべき行政課題に応じて成果指標を設定し、支払額を指標値の達成度に連動させる仕組み。従来型の委託事業は仕様通りに適切に実施されればあらかじめ定めた額が支払われていたが、PFSでは指標の達成度を基に成果を評価し、支払額を変動させる。経済産業省が2015年度に提唱した仕組みで、現在は内閣府が自治体に活用を推奨している。民間事業者にとっては結果に応じて報酬が増えるため、創意工夫の意欲が高まり、高品質な事業実施が期待できる。行政側は限られた財源を有効に活用できるほか、成果達成に関するリスクは原則として民間事業者が負うため、試行的な取り組みを実施しやすいなどの利点があるとされる。医療・健康、介護、まちづくりなどの分野で、全国の自治体で成功事例が出ている。

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