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社説(9月19日)訪問介護員の不足 若い人材確保が急務だ

 介護が必要な高齢者などの自宅を訪れ、食事や入浴の介助といった介護保険サービスを提供する訪問介護員(ホームヘルパー)の人手不足が深刻だ。公益財団法人「介護労働安定センター」の2022年度調査によると、ヘルパーが足りないと感じている介護事業所は全国で83・5%に上り、他の介護職種と比べて極めて高い。さらに、ヘルパーの4人に1人が65歳以上と、高齢化も目立つ。
 国は「地域包括ケアシステム」と銘打って、重い要介護状態になっても住み慣れた地域でできる限り長く暮らせる社会の仕組みづくりを目指している。だが、その要となるヘルパーの不足で、自宅での生活を望みながらも、高齢者施設の入所などを選択せざるを得ないケースも多い。
 訪問介護は地域によっては移動に多くの時間を割くため、採算が取りにくいという実情もある。介護人材の不足はヘルパーに限らないが、地域包括ケアの理念を掲げる以上、国や自治体は介護事業所が訪問介護を継続できるよう、支援を惜しんではならない。特に若い人材の確保は急務で、力を注ぐ必要がある。
 ヘルパーの不足や高齢化、事業収支の悪化などを理由に、民間だけでなく、公的な性格を持つ市区町村の社会福祉協議会(社協)が運営する訪問介護事業所の廃止も相次ぐ。共同通信の調査では、この5年間で全国で約1500カ所あった事業所が1300カ所ほどまでに減った。
 採算面から民間が受けたがらない訪問介護を社協の事業所がカバーしていた面もあるだけに、在宅介護を望む人にサービスがますます行き届かなくなると懸念される。
 ヘルパーの有効求人倍率(20年度)は約15倍。特に若い世代の応募が少ないのは、待遇の低さにあると繰り返し指摘されている。1対1で介護する責任の重さに精神的な負担を感じ、敬遠する人も少なくない。今後、高齢ヘルパーの退職が進めば、人手不足に拍車がかかる。
 若い人材の確保も念頭に、厚生労働省は、介護分野で働く技能実習生や在留資格「特定技能」を持つ外国人の業務拡大について検討を始めた。意思疎通への懸念から認めていない訪問介護をできるようにするかを焦点に内容を詰めていく。介護施設で経験を積み、コミュニケーション能力を身に付ければ、ヘルパーも任せられるのではないか。
 ただ、単に外国人材を人手不足の穴埋めと考えるようなことがあってはならない。介護保険サービスを根底で支える大切な職種にふさわしい待遇が受けられるよう、改善を図らないと、介護に関心がある意欲的な若い外国人も目を向けない可能性がある。

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