テーマ : シニア・介護・終活・相続

家族介護者 頑張り認め 休憩を 静岡でストレスケア講座

 家族の問題だから他人には相談できない。イライラを相手にぶつけてしまうのは私の心が狭いから-。家族を介護する時、そんなふうに自分を追い詰めてはいないだろうか。家族を介護すると、人はどんな心理状態になりやすいのか。当事者が客観的に知り、自身をケアする方法を学ぶ「家族介護者のためのストレスケア講座」が2月下旬、静岡市内で開かれた。

家族介護者がストレスケアの方法を学んだ講座=静岡市駿河区の市地域福祉共生センターみなくる
家族介護者がストレスケアの方法を学んだ講座=静岡市駿河区の市地域福祉共生センターみなくる


 講師を務めたのは、理学療法士で心理カウンセリング想月=同市葵区=のジュニアカウンセラー鈴木三恵さん(36)。鈴木さんによると、家族介護者は、①全て自分がやらなければいけない②どうして自分ばかりがこんな思いをしなくてはならないのか-という心理状態に陥りやすい。誰を介護するかによってもストレス具合が違い、特に、実の親や配偶者は自分が見なくてはいけないと強く思う人が多い。
 憎しみを抱えたまま接する可能性もあるし、介護を始めてから良好な関係が崩れ、今まで抱いていた感情が変化することで、自分自身を責める人も多いという。自分の時間を確保したり、信頼できる人に自らの気持ちを話したりすることが大切だ。「十分頑張っているので休憩する時間があっていい。それは甘えではなく、自分に優しくするということです」
 参加者は介護にかける時間・お金・気持ちを紙に書いて視覚化する作業をした。書き出すことで、時間とお金のバランスが見えてくる。例えば、介護する時間は長くても、お金を全然かけてない場合は、利用できる介護保険サービスがないかケアマネジャーに相談することで環境が改善されるかもしれない。
 「相手のことを思っている時間もあなたの貴重な思考力を使っている。目に見えていない時も介護をしていると認めてほしい」と鈴木さん。考えないようにしても家族の様子が気になってしまう時は、目の前にある物や自分の体に意識を向けることで思考が止まるという。参加者もその場で実践し、椅子に座って目をつぶり、太ももや足に意識を向けて椅子や靴の感触を確かめた。
 講座は市社会福祉協議会駿河区地域福祉推進センターが主催し、配偶者や親を介護する12人が参加した。仕事をしながら認知機能障害の夫(76)を介護する女性(71)は、生活を振り返って「夫を置いて外出する時、自分だけぜいたくをしているようで悪い気がしていたが、自分が健康でないと相手を守れないと思った。自分を大事にしていきたい」と話した。
 高齢化に伴って介護が必要になる人が増えれば、その人の身近で支える人も増える。老老介護となれば体力、精神的にも負担は重い。鈴木さんは「まずあなたが楽になってほしい。自分が苦しい中で相手の世話をすると怒りたくなくても強く当たってしまう。どうかそんな自分を責めないでください」と呼びかけた。
 (生活報道部・伊藤さくら)

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