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要配慮者搬送 DMAT続ける 能登派遣静岡県チーム 活動長期化 「地域に受け皿つくる」

 能登半島地震は発災から1カ月余りが経過し、災害医療のフェーズは慢性期に入りつつある。ただ、要配慮者の搬送ニーズはなおあり、静岡県から派遣された災害派遣医療チーム(DMAT)も搬送調整などで活動が長期化している。一方、避難所で体調を崩した高齢者を被災した地域の福祉施設で再び受け入れようとする動きも出てきた。

自衛隊と連携し搬送調整を行うDMAT隊員=1月下旬、石川県輪島市(聖隷三方原病院提供)
自衛隊と連携し搬送調整を行うDMAT隊員=1月下旬、石川県輪島市(聖隷三方原病院提供)
建物の一部が損壊した介護施設の状況を確認するDMAT隊員(左)=1月下旬、石川県輪島市(聖隷浜松病院提供)
建物の一部が損壊した介護施設の状況を確認するDMAT隊員(左)=1月下旬、石川県輪島市(聖隷浜松病院提供)
被災者の搬送支援に当たった田村毅夫さん=1月下旬、静岡市清水区
被災者の搬送支援に当たった田村毅夫さん=1月下旬、静岡市清水区
自衛隊と連携し搬送調整を行うDMAT隊員=1月下旬、石川県輪島市(聖隷三方原病院提供)
建物の一部が損壊した介護施設の状況を確認するDMAT隊員(左)=1月下旬、石川県輪島市(聖隷浜松病院提供)
被災者の搬送支援に当たった田村毅夫さん=1月下旬、静岡市清水区

 浜松市中央区の聖隷三方原病院の看護師山根康裕さん(44)ら3人は1月25~28日、輪島市保健医療福祉調整本部で福祉施設の入所者の搬送調整に当たった。同市の福祉施設では、建物の損壊やスタッフの被災でマンパワーが不足し、入所者のケアが十分できなくなった。市は全施設から入所者の避難を進めていて、1月下旬には金沢市内の施設などへの搬送が終盤に差しかかっていた。
 一方で、「避難所で生活し続けるのが難しい人が増えている」と看護師の高山祐輔さん(36)は振り返る。活動量が下がり、要介護度が上がるなど状態が悪くなる被災者は今後も増加が予想される。高山さんらは被災した介護施設に足を運び、受け入れが可能かどうかを調査した。
 診療放射線技師の鈴木涼亮さん(35)は「戻れるという確約がないまま離れることに抵抗がある被災者も多い」と実情を説明する。地域での要配慮者の受け皿づくりと同時に、支援の手から徐々に離れ、被災地が自立して医療福祉体制を運営できるよう移行していく必要もある。被災した施設で新たな入所者を受け入れることができれば、スタッフの雇用維持や復興にもつながる。
 山根さんは支援が入りにくい中山間地対策の重要性を再認識し、南海トラフ地震を見据える。「周辺施設や地域の医療、福祉関係者との関係強化を図りたい」
 本県からのDMAT派遣は当面19日まで。金沢市内の避難所での健康管理や避難者の入退所調整などを担う。静岡県DMAT調整本部要員の松岡良太医師(55)は急性期を超えて活動が続いている点について「医療過疎で救護班や地元への引き継ぎがしにくい状況。今後も単発で搬送調整のニーズはあるだろう」とみる。
 (社会部・中川琳)
介護タクシーも支援 救急車と役割分担  被災地での要配慮者の搬送には静岡県内の介護タクシー業者も支援に当たった。静岡市清水区で「静岡民間救急」を運営する田村毅夫さん(40)は、現地活動の経験を踏まえ、人的、物的支援が限られる中で公的な救急車と民間との役割分担の重要性を指摘する。
 田村さんは1月下旬、輪島市や珠洲市で高齢者の搬送に当たった。災害派遣医療チーム(DMAT)の指揮下で被災者8人を金沢市内の1・5次避難所や福祉施設などに移送した。いずれも80~90代で認知症や高血圧など持病があった。状態が安定していても、「いつ急変してもおかしくない状態。1週間遅れていたら亡くなっていたかもしれない」と振り返る。
 優先度の高い重症者はDMATや救急車が、医療行為が必要ない被災者は田村さんら民間業者が搬送した。静岡県庁や横浜市消防局を経て介護タクシー会社を起業した田村さんは行政の限界を挙げ、「患者の状態に応じて民間でも搬送が可能な場合は委託できる体制を整える必要がある」と訴えた。

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