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脳と腸の密接な関係【未来は腸内細菌とともに⑥】

 腸内フローラの変化は体調だけでなく脳にまで影響を及ぼしている-。近年の研究で、脳と腸が影響し合っていることが次々と明らかになり、「脳腸相関」と呼ばれるようになりました。

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 脳と腸は迷走神経でつながるほか、各種のホルモンを介しても常にやりとりをしています。脳がストレスを感じると情報が腸に伝わり、蠕動[ぜんどう]運動が変化します。その結果、下痢や便秘になり、腸内環境の変化でフローラのバランスも乱れます。
 プレッシャーがかかる試験や仕事の前におなかの調子を崩す経験がある方もいるでしょう。それは過敏性腸症候群の可能性があります。緊張やストレスで体調が悪化する場合、腸内フローラのバランスが悪いことも多く、腸内環境を良くすれば予防が期待できます。
 では逆に、腸から脳への影響は。近年、フローラの乱れがうつや不安障害、自閉症、パーキンソン病、多発性硬化症、認知症などの精神神経系疾患に関連することが明らかになってきました。
 ある種の自閉症は乱れたフローラが作る尿毒素が脳に作用することが原因でした。アルツハイマー病患者ではフローラの多様性が低く、ビフィズス菌が少ないと報告されています。マウスにビフィズス菌を経口投与すると認知機能や学習、記憶能力が高まったという動物実験結果もあります。
 腸内フローラの存在自体が脳の機能を高めるという報告すらあります。フローラがない無菌マウスは、フローラがある普通のマウスに比べ落ち着きがなかったり、ストレスに弱かったりすると分かりました。
 脳で記憶をつかさどる海馬やコミュニケーションに関わる扁桃体[へんとうたい]に腸内フローラが影響していたのです。菌のサプリメントを摂取させると、ストレス症状を軽減できたとの報告もあります。
 腸内細菌が食の好みを左右することや、運動へのモチベーションに影響しているとの研究結果も出ています。
 ここまで関わっているとなると、実は腸内細菌が私たちをコントロールしているのでは、とも思えるほどです。生物の発生では、脳よりも先に腸が作られます。脳が指令を下しているように見えて、実は腸が“司令官”なのかもしれません。
 腸内フローラと私たちの健康との関係は、想像をはるかに超えているようです。私たち一人一人のフローラがどう形成されてきたか、気になってきませんか? 次回は腸内フローラを決める要因についてお話しします。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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