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大自在(5月26日)物忘れ

 物忘れ。用事を済まそうと立ち上がって歩き出したものの、家族と少し会話しただけで何をしようとしたのか思い出せない。老化の不安は尽きない。でも過度の心配は不要。
 図書館の医学書を閲覧すると、大半の人が40代後半から50代にかけて物忘れを経験し始めるとあった。玄関にあるはずの車のキーが見つからない。めがねを置き忘れた―。度重なると病気を疑いたくなるが、忘れたことを忘れたと自覚できるうちは認知症とは異なるそうだ。
 ドイツの著名な心理学者ヘルマン・エビングハウスが提唱した「忘却曲線」によると、人は五感で得た情報の約4割を20分で忘れる。学んだたことでも1カ月後にはほとんど忘れる。脳は新しいことを覚えるため、忘れる必要がある。
 覚えておきたいことを反復して覚える努力をするから記憶として定着する。大切なのは復習で、わずかな時間であっても24時間以内に復習すれば100%の記憶が戻るそうだ。
 文人の書には記憶や思い出、忘却に関する名言名句が多い。「ただ覚えさえすればいい。忘れる方は努力しなくても自然に忘れる。忘れる事を恐れたら何も覚えられやしない」。夏目漱石の門下生で名文家とされる内田百閒[ひゃっけん]の言。
 「忘却と、それに伴う過去の美化がなかったとしたら、人間はどうして生に耐えることができるであろう」(三島由紀夫)。「忘れるにまかせるということが、結局最も美しく思い出すということなんだ」(川端康成)。先達に学べば忘却にあらがうより、忘れるべきは忘れた方が人生は豊かになりそう。

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