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息子と「二人三脚」の経験生かして 保護者同士交流図る【吃音と歩む 思い伝えたい③】

 

息子と吃音について語り合う佐藤章子さん(左)=5月中旬、沼津市
息子と吃音について語り合う佐藤章子さん(左)=5月中旬、沼津市
高校入学時、吃音の症状を担当教員に伝えるために持参したシート(写真の一部を加工しています)
高校入学時、吃音の症状を担当教員に伝えるために持参したシート(写真の一部を加工しています)
息子と吃音について語り合う佐藤章子さん(左)=5月中旬、沼津市
高校入学時、吃音の症状を担当教員に伝えるために持参したシート(写真の一部を加工しています)

 「吃音(きつおん)で悩みに悩み、2人で泣いたこともあった」
 沼津市の佐藤章子さん(57)は吃音がある高校3年生の息子(17)と二人三脚で歩んできた。現在は言語障害、発達障害の子どもを持つ親の会「静岡県ことばと心を育む会」に所属。吃音に悩んだ経験を生かそうと先頭に立って活動し、積極的に保護者間で情報を共有したり、交流会を開いたりしている。
 5歳の時だった。首に青筋を立て「グッ…」と力を込めて、懸命に話そうとする息子。その姿を見て驚いた。小学校に入学してからは正確に発音ができない構音障害の症状も出始め、言語通級指導教室(ことばの教室)に通ったが、吃音だけ改善されなかった。息子の話し方が同級生にからかわれていることも知った。
 6年生になり迎えた卒業式。大勢の保護者や在校生の前で一人ずつ将来の夢を発表する場が用意された。練習が始まると思い通りに話せないストレスで症状がさらに重くなり、生活に支障が出始めた。息子は涙を浮かべてこう訴えた。「吃音を治したい」。そこから吃音ともう一度向き合い、当事者団体のしずおか言友会や関連書籍から必死に情報を集めた。全ては息子のために―。
 進級して担任が替わるたびに、症状を説明する資料や学校生活で配慮してほしい点をまとめたシートを持参して、理解者を増やす努力を重ねた。高校受験の面接でも事前に具体的な症状を高校側に伝えることで安心につながった。「いつも通りのあなたで大丈夫」と息子の背中を押すことができた。
 親の育て方が原因という説は否定されているが、いまだに「下の子の世話が中心で愛情を注げなかったから」などと自らを責めてしまう親もいる。保護者と交流する中で思うのは、生活上の障壁を取り除く「合理的配慮」の存在を知らない人が多いこと。保護者のネットワーク活動で普段持ち歩くケースには、吃音の関連資料が数多く挟んである。「まずは情報収集のためでもいい。家族だけで抱え込まずに気軽に連絡してもらえたらうれしい」
 合理的配慮 事業者義務化へ
 九州大学病院(福岡県)で吃音外来を担当する菊池良和医師(44)によると、吃音は言語障害に相当し、障害者差別解消法により当事者は合理的配慮の提供を受ける権利がある。同法は改正され、来年4月から国や自治体に加え、企業などの事業者も合理的配慮の提供が義務化されることになった。
 菊池医師は幼保育園、小中高大、企業向けに症状の説明と合理的配慮の具体例を記した資料を作成し、著書「吃音の合理的配慮」(学苑社)で紹介している。資料は同社ホームページでダウンロードできる。

 <メモ>県ことばと心を育む会は17日午前10時~11時半、沼津市の「サンウェルぬまづ」で吃音や場面緘黙(かんもく)、発達障害などを持つ幼児から高校生までの保護者交流会を開く。申し込みはメール<kotobaーtobu@yahoo.co.jp>へ。当日参加可。

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