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OH!LA!HO BEER(長野県東御市) 豊かなホップ香「挑戦」 名産ワインと並ぶ存在【クラフトビール群雄割拠 静岡/山梨/長野/新潟③】

 静岡、山梨、長野、新潟4県の県紙がリレー形式で地元のクラフトビールを紹介するこの企画。今回、信濃毎日新聞が紹介する「OH!LA!HO BEER[ビール]」は、眺望が開けた高台で、少数精鋭のメンバーが定番と個性的な商品の数々を手がけている。

タンクから取り出した定番「ヌーベルセゾン」の香りや色の状態を確認する醸造スタッフの鈴木団さん
タンクから取り出した定番「ヌーベルセゾン」の香りや色の状態を確認する醸造スタッフの鈴木団さん
創業から26年続く定番「アンバーエール」の仕込みタンクにホップを入れる醸造責任者の山越卓さん
創業から26年続く定番「アンバーエール」の仕込みタンクにホップを入れる醸造責任者の山越卓さん
温かい室内でじっくり味わう「ビエール・ド・雷電 冬仕込みポーター」
温かい室内でじっくり味わう「ビエール・ド・雷電 冬仕込みポーター」
オラホビール
オラホビール
タンクから取り出した定番「ヌーベルセゾン」の香りや色の状態を確認する醸造スタッフの鈴木団さん
創業から26年続く定番「アンバーエール」の仕込みタンクにホップを入れる醸造責任者の山越卓さん
温かい室内でじっくり味わう「ビエール・ド・雷電 冬仕込みポーター」
オラホビール

 標高717メートル、眼前には美ケ原高原や八ケ岳、遠くは北アルプスの山々が広がり、東には浅間山を拝む。長野県東御市のオラホビール工場は、信州の山々がおりなす絶景の中に構えている。
 船出は1996年。小県郡東部町(現東御市)振興公社が、運営する日帰り温泉施設にさらなる誘客を-と醸造所兼レストランを整備した。「おらほ」は、信州で「自分、俺たちの方・ところ」を表す方言で、地元在住のエッセイスト玉村豊男さん(77)が名付けた。
 東京農大で醸造を学び、農協に勤めた小林亮二さん(64)=前工場長=が転職し、米国で研修。「ゼロからのスタート」を担った。
 当時、日本人の好みに合うよう試行錯誤したアンバー、ゴールデンの両エールは今も続く定番だ。「お客さんの反応を見るのがやりがいにつながった」と小林さん。知恵を絞り、特産のリンゴやソバを用いた商品も作った。タンクが冷え過ぎた時は外側から湯をかけるなど、「生き物」を扱う仕事ならではの苦労を懐かしむ。
 現在の醸造責任者、山越卓さん(48)は2004年、ものづくりにあこがれて転職してきた。低迷期は1人で事務、配達までこなす辛苦もあったが、現工場長の戸塚正城さん(52)が加わると新たな開拓に出た。14年、豊かなホップ香で、カラスと海賊をモチーフにした缶デザインの新商品で「挑戦」を印象づけた。工場近くでホップも育てながら、ワイン銘醸地の東御市で、ワインと並ぶビールの存在をアピールする。
 20年春、工場拡張で生産能力を5倍に引き上げた。家飲み需要を追い風に来年はフル稼働を目指す。ビール造りを志す20~30代も現場に加わった。「チームで思いを共有して効率を高めたい」と山越さん。「飲んだ方の心地の良いビール」を基本に、人々の人生のお供に-と夢を描く。(信濃毎日新聞社)

この1杯 季節ごとに変わる味
 「ビエール・ド・雷電 冬仕込みポーター」
 「雷電」シリーズは、江戸時代に大活躍した現東御市出身の力士、雷電為右衛門[ためえもん]にちなむ。季節ごとに味と缶デザインを入れ替えていて、常温保存できる。冬限定品は温かい室内でじっくり味わう黒ビール。深いりの麦芽を使うため、香り高くほろ苦い。
 今年1月、大相撲初場所で木曽出身の御嶽海関が優勝し大関に昇進すると、「信州出身は雷電以来227年ぶり」と注目された(九州場所は関脇に)。雷電シリーズにも好角家や専門店から反響が寄せられた。
 圧倒的に強かった雷電に命じられた禁じ手の一つ、閂[かんぬき]にちなんだ通年販売の「雷電カンヌキIPA」も、かんきつの香りと柔らかな苦味で人気。
      ◇
 オラホビール 1996年創業。隣接する「湯楽里[ゆらり]館」内の「ワイン&ビアミュージアム」で飲み比べが楽しめる。長野県東御市和3875。<電0268(64)0006>。

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