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「夜の街」の女性、映画に 23歳監督、悩む若者に光を

 23歳の女性監督が夜の新宿・歌舞伎町に生きる若い女性をテーマに、映画を製作している。水商売の経験を基に脚本を執筆した。近年は歌舞伎町の一角「トー横」など、夜の街に居場所を求める10~20代が話題となることも多い。疎外感や孤独感に悩み、傷つく同世代に向け「生きることに少しでも光が差す作品にしたい」と監督は話した。

映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん=東京都荒川区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん=東京都荒川区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん(右)=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん(右)=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん(左)=2日、福岡市
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん(左)=2日、福岡市
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん=2日、福岡市
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん=2日、福岡市
夜の新宿・歌舞伎町に生きる女性をテーマに映画を製作する木村ナイマさん=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
夜の新宿・歌舞伎町に生きる女性をテーマに映画を製作する木村ナイマさん=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん=東京都荒川区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん(右)=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん(左)=2日、福岡市
予告編を上映した会場で、参加者に語りかける木村ナイマさん=2日、福岡市
夜の新宿・歌舞伎町に生きる女性をテーマに映画を製作する木村ナイマさん=東京都新宿区(「天使たち」製作プロジェクト提供)

 メガホンを取るのは、上智大を今月卒業した木村ナイマさん。是枝裕和監督に憧れ、「映画が撮りたい」と、長く暮らした福岡から上京。見知らぬ土地で、友だちをつくろうと必死だった。周囲には富裕層が多く、常に物入りだった。18歳から約2年間、お金のため夜のラウンジなどで働いた。
 社会の中で自分を押し殺し、ストレスを吐き出しに来る男性客。彼らの求める姿に徹し、性の対象とされる自分たち女性。「男女とも自分を偽り、性欲や承認欲求などを満たすため、互いを消費し合うことしかできない」。心身共に疲弊し、境遇も考えも異なる同世代の同僚の女性らと、支え合った。
 「女という同じ肉体を持ってるから、共有できるものがある」。この気持ちを表現したいと、創作意欲が湧いてきた。
 性別の役割分担を強いる、社会の家父長制の根強さも疑問だった。大学の友人6人と完成させた1作目では、義父の性虐待を誰にも言えず苦しむ女子高生を描き、神奈川県で昨年開かれた映画祭で賞を獲得した。
 今月上旬、福岡市内の大学で行われたイベントで、新作「天使たち」の予告編が上映された。歌舞伎町のガールズバー。きらびやかなライトに照らされた若い女性が、男性客に優しく笑いかける。求められるままに酒を飲み続け、やがて視界が揺らぎ、足に力が入らなくなっていく―。
 木村さんは参加者約40人を前に、新作の脚本執筆のため、歌舞伎町のガールズバーで3カ月ほど働いたと明かした。「歌舞伎町に来るのは優しくて、傷ついていて、誰にも守ってもらえなかった人。悪い街に見えるかもしれないけど、誰でも受け入れてくれる。ここでやっと仲間や居場所を見つけた子を否定しない映画が作りたかった」
 若者の受け皿になっているのは新宿だけではない。大阪・道頓堀の通称「グリ下」、福岡・天神の警固公園など、似たような場所が存在する。若者はそこで、自分の境遇に共感する相手を探し、リストカットや市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)、ホストとの仮想恋愛などで、心の隙間を埋めようともがいている。
 新作は今夏に完成予定で、劇場公開と国際映画祭への出展を目指す。木村さんは「無力な女の子である私から、同じような女の子たちに作品が届くよう、完成に向けて頑張りたい」と語った。

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