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【プーチン大統領5選】侵攻長期化へ布石着々 圧勝の陰、漂う閉塞感

 17日開票のロシア大統領選で、プーチン大統領が5度目の当選を決めた。ウクライナ侵攻開始から2年余り。前例のない制裁により経済が崩壊すれば政権継続が危ういとの当初の見方もはね返し、欧米が公正でないと断じる中、史上最高得票の「地滑り的勝利」を収めた。憲法上は2036年まで大統領を続けられ、国防強化や経済改革など侵攻長期化を見据えた布石を着々と打っている。

18日、モスクワの選対本部で会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)
18日、モスクワの選対本部で会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)
ロシアのプーチン大統領を巡る状況(写真はタス)
ロシアのプーチン大統領を巡る状況(写真はタス)
18日、モスクワの選対本部で会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)
ロシアのプーチン大統領を巡る状況(写真はタス)

 だが欧米との関係正常化の見通しは全く立たず、戦況の打開策も停戦への動きも見えない。選挙圧勝の陰で国内には閉塞感が漂う。71歳のプーチン氏は今後も難しいかじ取りを迫られる。
 ▽別格
 「ロシアは運命の分かれ目にいるのではない。戦略的発展の道を進んでいるのだ」。今月13日に放送されたインタビューでプーチン氏は今後の政権運営に自信を示した。侵攻を逆手に産業の多角化や食料自給率向上、科学技術振興を図り、ソ連型の自給自足経済を実現する構えだ。ある外交官は指摘する。「制裁は効果を上げていない」
 テレビの候補者討論参加を拒否する一方、2月末の年次報告で今後6年間の基本政策を示したプーチン氏。昨年12月の立候補表明以来、自身への投票を呼びかける場面は一度もなかった。国民の要請で大統領職を続けるという演出に加え「自分は別格」との強烈なプライドものぞく。
 年次報告では少子化対策や青少年教育の充実、経済のデジタル化といった新たな国家プロジェクトの始動を表明。最優先の軍備増強のほか、各地の空港整備など選挙を意識したばらまき政策も目立った。
 ▽楽観論
 主要輸出品の原油には制裁で価格上限が設定された。輸出を増やした中国やインドには買いたたかれ、苦しい財政事情が続く。
 財源確保へ政権が検討するのが累進課税の導入だ。原則一律13%の所得税率を改め、高所得者に大きな税負担を求める。富裕層より庶民に軸足を置くと強調するプーチン氏の意向に合致する。
 侵攻の前線では大統領選前に戦果を上げようとロシア軍が昨年末から攻勢を強めた。ウクライナ軍の反転攻勢は失速しロシア側の優勢が目立つ。プーチン氏は5選を決めた後の記者会見で、侵攻の継続を改めて明言。ロシア保守層の間では、今年中に有利な形で停戦に持ち込めるとの楽観論も出始めた。
 ▽マグマ
 一方、欧米はウクライナ支援を続ける構えで、仮に停戦しても制裁が早期解除される見込みは薄い。ロシアは中印とブラジル、南アフリカの主要新興国にイランやエジプトなどを加えた拡大BRICSを多極化外交の基盤に据え、10月に中部カザンで開く首脳会議で非欧米勢力結集を誇示する考えだ。制裁を回避する国際決済システム確立や、今後の成長に不可欠な人工知能(AI)など高度技術開発の協力に期待を抱く。
 自由な言論を封じられたロシア社会は表面上は平穏だ。だが侵攻に反対し、2月16日に北極圏で獄死した反政府活動家ナワリヌイ氏の3月の葬儀では、モスクワの墓地周辺に数万人ともいわれる人々が集まった。
 今回の選挙でも妻ユリアさんが呼びかけた17日正午の「反プーチン」投票に呼応するように、各地の投票所で行列が見られた。事実上24年も続く長期政権への不満は地下のマグマのようにたまり続けている。(共同)

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