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【イスラエルがイラン大使館攻撃】二正面戦闘で圧力強化 対ヒズボラ沈静化狙う

 シリアにあるイラン大使館の建物が空爆され、イランは敵対するイスラエルの仕業と断じた。イスラム組織ハマスに加え、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの越境攻撃も激しさを増し、イスラエルは二正面の戦闘を強いられている。外交施設への異例の直接攻撃で、ヒズボラ支援の中心人物を殺害。イランへの圧力を強め、対ヒズボラ戦闘の沈静化を狙った。

中東の対立構図
中東の対立構図

 ▽優越性
 イラン大使館が攻撃を受けたのは1日午後5時(現地時間)ごろ。駐シリア大使によると、イスラエルのF35戦闘機がミサイル6発を発射した。領事部が入る建物はがれきの山となり、白い煙がもうもうと上がった。
 攻撃により、ヒズボラ支援の中核を担っていたとされるイラン革命防衛隊のモハンマドレザ・ザヘディ司令官らが死亡した。イスラエル軍は司令官らの行動を把握し、正確に狙ったとみられる。
 レバノンとの国境沿いではヒズボラとの交戦が激化。イスラエル側の住民約7万人が避難を余儀なくされ、ネタニヤフ政権への不満も高まる。
 イスラエル軍はヒズボラとの全面戦争の準備はできていると豪語する。一方で政府は米仏両政府を仲介役にレバノン政府やヒズボラと間接交渉を続けている。攻撃により「イランにインテリジェンスの優越性を見せつけ」(イスラエルの軍事専門記者)、交渉を有利に進める狙いがあるとみられる。
 ▽報復要求
 「イスラエルに死を」。イランの首都テヘラン中心部の広場では1日夜、市民がシュプレヒコールを上げ、指導部に報復するよう訴えた。
 イランが支援するハマスと、イスラエル軍が昨年10月に戦闘を始めて以降、シリア領内のイラン関連施設は繰り返し攻撃にさらされ、革命防衛隊員も殺害された。しかしイランはこれまでイスラエル領土への直接攻撃は控えてきた。「戦火の拡大を避ける」(イラン政府関係者)のが本音だ。
 直接戦火を交えれば、イスラエルの同盟国の米国も参戦し、イラン本国が攻撃される可能性がある。指導部が最も恐れる革命体制の崩壊につながりかねない。
 米国も神経をとがらせる。米国務省のミラー報道官は1日の記者会見で「緊張激化や紛争拡大を招く恐れがあるいかなる行為も懸念している」と述べた。11月の大統領選で再選を目指すバイデン大統領にとり、中東情勢の混迷が深まれば外交の失敗とみられ、打撃となりかねない。
 ただイラン指導部を支える保守強硬派は断固とした報復を求めている。弱腰を見せられないイランはどこまで自制できるのか―。イラン軍でなく中東各地の親イラン武装組織がイスラエルへの攻撃を強めるシナリオが予想される。イスラエルのガラント国防相は2日、同国国会で「攻撃を仕掛けるものは誰であれ、重い代償を支払う」とけん制した。(テヘラン、エルサレム、ワシントン共同)

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