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【参院政倫審】安倍派、裏金真相にふた 「記憶にありません」連発

 参院政治倫理審査会は裏金事件の実態解明に程遠い結果に終わった。自民党安倍派は派閥の政治資金パーティーを悪用した裏金づくりを断ち切ったはずなのに、復活させたのは誰の判断か。キーマンの世耕弘成前参院幹事長は「記憶にない」「知らない」を連発。ロッキード事件をほうふつさせ、真相にふたをするような言動に野党は怒る。「追及のステージを移行せざるを得ない。次は証人喚問だ」

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、開かれた参院政治倫理審査会。右奥は世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、開かれた参院政治倫理審査会。右奥は世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で質問する立憲民主党の蓮舫氏(左)と、答える世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で質問する立憲民主党の蓮舫氏(左)と、答える世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で発言を終え、資料をまとめる世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で発言を終え、資料をまとめる世耕前参院幹事長=14日午前
2022年8月の安倍派幹部会合を巡る発言
2022年8月の安倍派幹部会合を巡る発言
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、開かれた参院政治倫理審査会。右奥は世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で質問する立憲民主党の蓮舫氏(左)と、答える世耕前参院幹事長=14日午前
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院政治倫理審査会で発言を終え、資料をまとめる世耕前参院幹事長=14日午前
2022年8月の安倍派幹部会合を巡る発言

 ▽8月の幹部会合
 「誰が言ったか記憶にありません」
 14日、参院第24委員会室。安倍派の参院側会長だった世耕氏は政倫審で何度も強弁した。焦点となったのは自身も出席した2022年8月5日の安倍派幹部会合だ。
 当時、取りやめが決まった資金還流の復活を求める声が派内で上がっていた。議員個人のパーティー券を派閥が購入する形で戻すのはどうか―。会合ではそんな案が示されたという。
 今月1日の衆院政倫審では、会合時に安倍派会長代理だった塩谷立氏が「還流がなくて困っている人がいるから仕方ない」として復活したと説明。事務総長を務めた西村康稔氏は「結論は出ていない」と強調していた。
 経緯が曖昧な中、この日の参院政倫審で立憲民主党の蓮舫氏は「提案者は誰か」と迫った。弁明が注目された世耕氏は「分からない」の一点張りで押し通した。
 ▽違法性の認識
 野党が幹部会合に狙いを定めてただすのは、塩谷氏や世耕氏らが実は「違法性があることを前提に、還流復活の扱いを協議したのではないか」(共産党の山下芳生氏)と疑うためだ。
 22年4月に取りやめを指示した安倍晋三元首相は「現金還流は不透明で疑念を生じかねない」と問題提起したとの証言がある。世耕氏自身、還流復活に当たり、政治資金収支報告書に記載するという「適法な形」を意識したと暗に認めている。
 ところが世耕氏は、東京地検特捜部の捜査結果を免罪符のように持ち出し「幹部会合に出席した全員が不起訴、嫌疑なしになっている」と主張。政倫審出席後、記者団にも「8月の会合では過去の還付金について違法性を議論していない」と繰り返した。
 ▽険しい信頼回復
 政倫審では、連立を組む公明党から思わぬブーメランも飛んだ。世耕氏は野党時代の10年にX(旧ツイッター)で「私の事務所は初当選以来、1円単位できちんと記帳している」と政治資金の透明性を誇っていた。公明の竹谷とし子氏はこれを取り上げ「途中でやめたのか」と皮肉ったのだ。
 とはいえ裏金の発端も含め、多くの謎は残ったまま。参院政倫審の与党側幹事・佐藤正久氏(自民)でさえ思わず「残念ながら疑惑は深まった」と吐露した。
 野党はそろって、安倍派幹部を追及する次の舞台として「参考人招致や証人喚問に移る」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と息巻く。一方、世耕氏は「ケース・バイ・ケースだと思うが、知っていることは全部話した」と早速逃げを打つ。
 この日のやりとりを、内閣支持率の低迷にあえぐ岸田文雄首相は果たして把握しているのか。当の首相は政倫審後の14日夕、党本部で開かれた政治刷新本部会合で訴えた。「われわれの信頼を回復する道は本当に厳しく、険しい。民主主義を守るため、自民党が変わらなければならない」

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