テーマ : 読み応えあり

「イチゴ戦国時代」到来 各地で続々新品種誕生 収穫量、作付面積は減少

 今の季節、スーパーや青果店の店頭を華やかに彩るイチゴ。さまざまな品種が並び、目移りしそうだが、それもそのはず。農林水産省によると、日本国内では約300種もあり、世界全体の品種の半分以上が日本ルーツとの説もある。国内では、生産者の高齢化や後継者不足などから収穫量や作付面積は減少傾向だが、各都道府県などが品種改良に取り組み、新品種が続々誕生。「イチゴ戦国時代」の様相だ。

滋賀県農業技術振興センターで栽培されている同県オリジナル品種のイチゴ「みおしずく」=6日、近江八幡市
滋賀県農業技術振興センターで栽培されている同県オリジナル品種のイチゴ「みおしずく」=6日、近江八幡市
栃木県農業試験場いちご研究所内にある「いちご王国」の紹介ブース=12日、栃木市
栃木県農業試験場いちご研究所内にある「いちご王国」の紹介ブース=12日、栃木市
滋賀県農業技術振興センターで栽培中のイチゴ「みおしずく」を手に取る松田真一郎係長=6日、近江八幡市
滋賀県農業技術振興センターで栽培中のイチゴ「みおしずく」を手に取る松田真一郎係長=6日、近江八幡市
栽培中の「とちあいか」を手に取る栃木県農業試験場いちご研究所の畠山昭嗣特別研究員=12日、栃木市
栽培中の「とちあいか」を手に取る栃木県農業試験場いちご研究所の畠山昭嗣特別研究員=12日、栃木市
栃木県産イチゴをアピールする県庁前の看板=5日
栃木県産イチゴをアピールする県庁前の看板=5日
イチゴの生産が多い都道府県(2022年産)
イチゴの生産が多い都道府県(2022年産)
全国のイチゴ収穫量と作付面積の推移
全国のイチゴ収穫量と作付面積の推移
滋賀県農業技術振興センターで栽培されている同県オリジナル品種のイチゴ「みおしずく」=6日、近江八幡市
栃木県農業試験場いちご研究所内にある「いちご王国」の紹介ブース=12日、栃木市
滋賀県農業技術振興センターで栽培中のイチゴ「みおしずく」を手に取る松田真一郎係長=6日、近江八幡市
栽培中の「とちあいか」を手に取る栃木県農業試験場いちご研究所の畠山昭嗣特別研究員=12日、栃木市
栃木県産イチゴをアピールする県庁前の看板=5日
イチゴの生産が多い都道府県(2022年産)
全国のイチゴ収穫量と作付面積の推移

 「とてもジューシーで、口に含むと滴り落ちるぐらい果汁が出てくる」。滋賀県が5年をかけて開発した初のオリジナル品種「みおしずく」を前に、同県農業技術振興センターの松田真一郎係長が胸を張った。
 2016年から、適度な酸味と強い香りを持つ「かおり野」と、甘みが強い「章姫」をかけあわせた約1600個体の候補から選抜作業を繰り返して誕生。昨年12月から県内や首都圏で本格販売が始まった。
 松田係長は「県内産のイチゴはこれまで直売での販売がほとんど。直売主体だと売れ残りが出て農家の生活が成り立たない面もあった。農家の要望もあり、新たな販路として独自品種で市場出荷を目指すことになった」と開発の経緯を語る。
 「栃木県や福岡県のように大生産地化して…というのではなく、まずは県内で認知度をしっかり高め、おいしさを知ってもらう」(松田係長)と控えめだが、将来は海外輸出も見据える。
 一方、1968年から半世紀以上、収穫量日本一を記録し、「いちご王国」を打ち出す栃木県。県が開発した「とちおとめ」が全国的な知名度を獲得し、東日本を中心に各地で生産される主力品種となったが、現在は県農業試験場いちご研究所が2018年に開発した「とちあいか」を売り出し中。27年には作付面積を全体の8割にまで拡大する計画で、王国の主役が交代しつつある。
 とちあいか開発の背景には、王国とはいえ安穏としていられない事情があった。栃木県でもイチゴの収穫量、作付面積が減少傾向なのだ。開発に7年かけた結果、葉が黄色く縮む萎黄病に強く、とちおとめより大粒で甘みがあり、単位面積当たり約1・3倍の収穫量がある品種が誕生。表面が硬めで傷みにくく、長距離輸送にも耐え、輸出にも向く。
 いちご研究所の畠山昭嗣特別研究員によると、一般的にとちあいかは、とちおとめに比べて約1カ月早い10月中旬ごろに出荷が可能なことも大きな特徴。早い時期は単価が高く増収につながり、農家の支持を集めているという。
 栃木県内では主要品種は5~6月まで収穫が続くが、畠山研究員は「もっと作期の長い品種の育成も目標」と話す。イチゴは夏の高温下で実を付けて大きくなるのは難しいというが、いずれ通年で味わえる品種が生まれるかもしれない。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞