テーマ : 読み応えあり

【能登半島地震の液状化被害】地形変化、迅速対応が鍵 町復興、重層的な観点必要

 能登半島地震による石川県内灘町の液状化被害は、地域全体の地盤改良だけでなく、地形が変化した中で道路をどの高さに通すのかといった重層的な観点での復旧・復興計画が必要となる。町は道路の拡幅や区画整理を含めた検討方針を示すが、具体策は未定で、町の将来像は見えないままだ。過去の災害からは、迅速に対策を進める重要性が浮かぶ。

液状化とみられる現象で隆起した道=1月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で隆起した道=1月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で被害を受けた住宅と傾いた道路=2月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で被害を受けた住宅と傾いた道路=2月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の建物=2日
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の建物=2日
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の道路=1月
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の道路=1月
液状化とみられる現象で隆起した道=1月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で被害を受けた住宅と傾いた道路=2月、石川県内灘町
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の建物=2日
液状化とみられる現象で被害を受けた石川県内灘町の道路=1月

 ▽4割危険
 内灘町は金沢市に隣接するベッドタウン。能登半島地震では震度5弱を記録した。被害地域では建物が液状化で傾いたり沈下したりしており、一時的に空き家となった住宅も目立つ。立ち入る際のリスクを外観から診断する応急危険度判定では約4割が「危険」と判定された地区もある。
 内灘町の川口克則町長は「災害に強い町づくりをしたい」と話し、ずれた土地の測量や住民合意を経た上で、道路の拡幅などを含めた復興計画を策定する考えを大枠では示している。ただ具体的にどの地点でどのような作業を実施し、最終的な町の姿をどう描いているかは見えてこない。住民への説明や意見を聞く機会は4日時点で日程も設定されていないからだ。
 ▽スケジュール
 過去に地震の液状化被害を経験した自治体の担当者が重要性を指摘するのは対策のスピードだ。2018年9月の北海道地震で液状化被害が起きた札幌市清田区の里塚地区では地震の7日後に最初の住民説明会を開き、その後も毎月開催。2カ月後には薬液注入などの地盤改良案、3カ月後には工事の詳細や期間を示して同意を求めた。
 道路や住宅の対策工事が20年12月に完了するまでには被災から2年3カ月を要したが、住宅106戸のうち8割超の87戸の住民が修理や再建で残り、地域のコミュニティーが維持された。市の担当者は「早い段階で復興までのスケジュール感を示したことで、住民に『里塚に戻れる』と思ってもらえたことが大きかった」と振り返る。
 ▽調査
 科学的な視点も欠かせない。現地調査した金沢大の塚脇真二教授(地質学)は、複数の場所でボーリング調査を実施して一帯の地質を詳しく調べ、地盤改良の方法を検討するべきだと指摘する。
 「被害がなかった近隣の地域も地質は共通しているはずだ。今後もここで生活していく住民のためにも、再発防止に向けたしっかりとした調査と計画が求められる」と話している。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞