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【裏金事件】自民改革、実効性不透明 空疎に響く「説明責任」

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた党改革案は、議員の説明責任や罰則強化、脱派閥をうたう。ただ岸田文雄首相や安倍派幹部らの国会答弁は真相究明に後ろ向きで、政治資金規正法改正の全体像は見えないまま。改革の実効性をどう担保するのかも不透明で課題が残る。野党は「全ての文言が空疎に響く」と批判を強める。

自民党の政治刷新本部会合。奥中央はあいさつする岸田首相=7日午後、東京・永田町の党本部
自民党の政治刷新本部会合。奥中央はあいさつする岸田首相=7日午後、東京・永田町の党本部
自民党改革案の課題
自民党改革案の課題
自民党の政治刷新本部会合。奥中央はあいさつする岸田首相=7日午後、東京・永田町の党本部
自民党改革案の課題

 ▽指導力ゼロ
 「国民の信頼を取り戻すために自民党が変わらなければならない」
 7日、自民党本部。首相は政治刷新本部全体会合で訴えた。手元にある党則や規律規約、ガバナンス・コード(統治原則)の改正案には「説明責任」の記述が随所にちりばめられている。
 一体、説明責任とは何か。首相は政治資金収支報告書に不記載のあった議員に「あらゆる場を通じて説明を尽くしてもらいたい」と繰り返してきた。しかし衆院政治倫理審査会では安倍派幹部が当初、全面公開を渋った。審査後も実態は依然「闇」の中。野党は、鍵を握る森喜朗元首相の国会招致が不可欠とするが、首相は否定的だ。
 記者会見や政倫審に出席さえすれば免罪符となるわけではない。4日の参院予算委員会では、立憲民主党の石橋通宏氏が、首相は指導力を全く発揮していないと指摘。「説明責任を果たすという言葉が空疎に聞こえる」と当てこすった。
 ▽生煮え
 裏金事件では安倍、二階両派の幹部が立件を免れ、野党は「トカゲのしっぽ切り」と非難。自民は、会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕または起訴されれば議員に離党勧告できるよう規律規約を改正する方針だが、内規処分にとどまる。
 では規正法改正で踏み込むのか。首相は2月の衆院予算委で、議員が会計責任者の監督に相当の注意を怠った場合に罰金刑を科すとする公明党案を「参考になる」と評価した。とはいえ党内議論はまだ生煮えだ。
 事件を巡っては、安倍派幹部への厳しい対応を求める声は少なくないが、改正案に基づく処分は行わない。閣僚経験者は「それでは国民の理解は得られない」と断じる。
 ▽乏しい熱量
 自民は1970年代のロッキード事件、90年代の野党転落を境に派閥解消を進めた。それでも総裁選を機に息を吹き返してきた歴史がある。
 しかも現時点で、第2、第3派閥の麻生派と茂木派は派閥解散を公式に表明していない。9月の総裁選をにらみ、解散を宣言した安倍派や岸田派、二階派、森山派を交えた駆け引きが激化することは容易に想像される。ベテランは「実態は何も変わっていないのに、まるで派閥がないように振る舞うのは違和感がある」と懸念を示す。
 乏しい熱量を象徴するように、刷新本部会合では改正案への了承を求めても拍手はまばらだった。出席した船田元・衆院議員総会長は、くぎを刺すのを忘れなかった。「派閥の枠を残したまま政策集団にするのは看板の付け替えに過ぎない。全くの更地にするべきだ」

いい茶0

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