テーマ : 読み応えあり

【民間ロケット失敗】挑戦足踏み、巻き返しへ 識者「スピード感が鍵」

 スペースワンの初挑戦は失敗に終わった。右肩上がりの小型ロケット市場で存在感を示したかったが、足踏みを余儀なくされる。巻き返しを図れるのか。識者は「再挑戦までのスピード感が鍵を握る」と指摘。同社幹部は「諦めない」と次を見据えた。

打ち上げを控えたスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前10時48分、和歌山県串本町(共同通信社ヘリから)
打ち上げを控えたスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前10時48分、和歌山県串本町(共同通信社ヘリから)
小型ロケット「カイロス」1号機の爆発を受け、記者会見するスペースワンの豊田正和社長(中央)ら=13日午後、和歌山県那智勝浦町
小型ロケット「カイロス」1号機の爆発を受け、記者会見するスペースワンの豊田正和社長(中央)ら=13日午後、和歌山県那智勝浦町
打ち上げ直後に爆発したスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前11時1分、和歌山県串本町
打ち上げ直後に爆発したスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前11時1分、和歌山県串本町
カイロス1号機打ち上げ失敗のイメージ(スペースワンの資料を基に作成)
カイロス1号機打ち上げ失敗のイメージ(スペースワンの資料を基に作成)
打ち上げを控えたスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前10時48分、和歌山県串本町(共同通信社ヘリから)
小型ロケット「カイロス」1号機の爆発を受け、記者会見するスペースワンの豊田正和社長(中央)ら=13日午後、和歌山県那智勝浦町
打ち上げ直後に爆発したスペースワンの小型ロケット「カイロス」1号機=13日午前11時1分、和歌山県串本町
カイロス1号機打ち上げ失敗のイメージ(スペースワンの資料を基に作成)

 ▽計画変えない
 「いつでも」「どの軌道でも」衛星を届ける「宇宙宅配便」―。スペースワンは専用の発射場と機体を武器に、2030年代に年間30機の打ち上げを目指すとしてきた。
 「まずは原因究明だが、計画を変えるつもりは全くない」。和歌山県那智勝浦町のホテルで開かれた記者会見。豊田正和社長は強調したが、同社は次回打ち上げの見通しを明かさなかった。
 1号機には日本の固体燃料ロケット開発の中核を担ってきたIHIエアロスペースが培った技術をつぎ込んだ。打ち上げから約8分で3段目まで分離し、約50分後には衛星分離に成功する予定だったが、発射の約5秒後に爆発。最初から実用衛星を搭載することで信頼感をアピールするはずが、新型開発の難しさを露呈する結果となった。
 宇宙ビジネスに詳しい三菱総合研究所の内田敦主席研究員は「爆発までの5秒間のデータでどこまで原因を究明できるかだ」と指摘。「対応策の公表の仕方によっては市場からの信頼を高められる可能性もある」と注目した。
 ▽官から民へ
 日本のロケット開発はこれまで政府と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導してきた。だが世界では既に民間企業がけん引する。00年代以降、米国で起業家イーロン・マスク氏のスペースXや、アマゾン・コム創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジンなど新興企業が台頭。小型ロケットでは米ロケットラボが首位を走る。
 米金融大手モルガン・スタンレーは宇宙産業の市場規模が、17年の約3500億ドルから40年には約3倍の1兆ドル(約150兆円)超になると予想。日本政府も成長分野とにらみ、企業支援に力を入れている。
 総額1兆円規模の「宇宙戦略基金」を新設し、資金を民間企業に供給して技術開発を進める仕組みを整備。国内の市場規模を30年代早期には20年の倍となる8兆円にするとの目標も掲げる。
 スペースワンの成功により日本でも民間参入が加速されると期待されたが、先行きは見通せない。国産の大型ロケットH3の1号機が失敗した際には2号機打ち上げまでに約1年を要した。
 ▽挽回
 当初打ち上げを予定した9日は警戒海域に船舶が残って延期になり、民間発射場を運営する上で課題も明らかに。「発射場整備にロケット開発を経て、打ち上げまでこぎ着けたことは評価したい」と内田氏。
 小型ロケット市場は2番手争いが正念場といい、民間企業ならではの機動力でどれだけ早く次の打ち上げに臨めるかが行く末を決めるという。「ロケットラボ以外で飛び抜けた企業はまだない。挽回のチャンスはある」

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞