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【国際女性デー2024】職場に「イクメン」浸透 大手証券、風通しも良く

 男性社員の育児休暇取得を後押しする取り組みが、大手証券会社で浸透してきた。「昔ながらの男社会」のイメージが残る最大手、野村証券は昨年から奨励金制度を取り入れ、大和証券グループ本社は2週間以上の取得を必須とした。育児に積極的に参加する「イクメン」は社員に加え、顧客からも好評だ。女性に偏りがちな育児負担の軽減だけでなく、お互いに仕事で助け合う機運が高まり、職場の風通しが良くなるなど事業への相乗効果が見込める。

育休取得体験を語る野村証券の三輪田航さん=1日、東京都千代田区
育休取得体験を語る野村証券の三輪田航さん=1日、東京都千代田区
育休取得体験を語る野村証券仙台支店の林健太さん。左は上司の木村拓さん=1日、東京都千代田区
育休取得体験を語る野村証券仙台支店の林健太さん。左は上司の木村拓さん=1日、東京都千代田区
証券大手のユニークな男性育休制度
証券大手のユニークな男性育休制度
育休取得体験を語る野村証券の三輪田航さん=1日、東京都千代田区
育休取得体験を語る野村証券仙台支店の林健太さん。左は上司の木村拓さん=1日、東京都千代田区
証券大手のユニークな男性育休制度

 ▽「野村も変わった」
 野村証券の投資銀行部門勤務の三輪田航さん(30)は顧客に取得を伝えると「野村も変わったねと言われ、快く理解してくれた」と意外感を口にする。仙台支店で部下が取得した木村拓さん(51)は「時短勤務中の社員の後ろめたい様子が薄まった」と周囲への効果も実感した。
 後押ししたのは1カ月以上の育休取得者に対し年間基本給の1割を支給する仕組みで、昨年10月に始めた。取得した仙台支店の林健太さん(29)は「金銭面のプラスより、会社が推奨へかじを切った姿勢を感じたことで踏み切れた」と意義を強調する。野村証券で2022年度の男性の取得者数は40人だったが、23年度は今年1月までで既に97人に達した。
 ▽100%取得
 対象男性の取得率が22年度まで6年連続で100%に達したのは大和証券グループ本社だ。23年1月から2週間以上の取得を求めた。現在の平均取得日数は18・6日で、2週間を超える。同僚も取得を前提に、仕事を進めやすくなった。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券も20年度から100%取得で、30代の男性トレーダーは「普段から業務を複数人で共有していたので引き継ぎやすかった」と振り返る。中途採用の社員に配慮し、今年4月から勤続1年未満でも取得を認めるように拡充予定だ。
 同様に21、22年度に100%取得のSMBC日興証券は男性社員に限り3歳未満の子どもを持つ場合は最長10営業日連続の短期育休を設け、複数の休暇を組み合わせられるように工夫した。みずほ証券は業界で珍しく40代の部長職の社員が1カ月取得した実績がある。
 ▽自主性
 厚生労働省の22年度雇用均等基本調査によると、国が保障する「育児休業」の男性の取得割合は業種別で、証券を含む「金融業、保険業」が約37%で最高だった。
 ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員はこうした傾向の背景に、業界の経営基盤の余裕を挙げた上で「総合職男性の長時間労働という、バブル時代の働き方を改革する象徴的な施策に据えている」と指摘。今後は数値目標の達成のみを目的とせず「自主的な取得環境の整備や働き方の選択肢を増やすことも重要だ」と説く。

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