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【政治資金問題】「抜け道」懸念、現実に 厳格基準適用されず

 自民党の茂木敏充幹事長や棚橋泰文元国家公安委員長の資金管理団体などから、使途公開基準の緩い後援会組織に移された資金が、2007年の政治資金規正法改正後に増加していたことが明らかになった。厳格な使途公開基準を定めた「国会議員関係政治団体」から別団体に寄付することで基準適用外となる「抜け道」は、法改正時から懸念されていた。

自民党の茂木幹事長の資金管理団体の政治資金収支報告書(2022年分)の写し。使途公開基準の緩い後援会組織への寄付が並ぶ
自民党の茂木幹事長の資金管理団体の政治資金収支報告書(2022年分)の写し。使途公開基準の緩い後援会組織への寄付が並ぶ

 ▽国会審議での指摘
 「関係団体の支出を明らかにしたくない場合には、他の政治団体に寄付をしてそこで支出すれば法改正の対象にはならない。抜け道と言わなくて何と言えるのか」
 07年12月20日、政治資金規正法の改正案を議論する参院の特別委員会で、野党議員からは資金移動にくぎを刺す指摘が出た。人件費を除く1件1万円超の支出について使途明細の記載が義務付けられた国会議員関係政治団体をつくっても、資金を自由に移動できれば意味がない。公開基準厳格化の対象外となった「その他の政治団体」には、資金管理団体から年間5千万円、政党から無制限の寄付が可能だ。
 この場で改正案を説明した衆院特別委員長が、棚橋氏だった。棚橋氏の選挙区支部と資金管理団体は、08~22年の15年間に使途公開基準の緩い政治団体「棚橋泰文後援会連合会」に計4億3455万円を移動。19年には資金管理団体からの移動上限となる5千万円を移している。後援会連合会では08~22年の支出全体の8割近くで使途明細がない。
 ▽積み残し
 棚橋氏は07年当時、自民党改革加速議員連盟の会長として、多額の事務所費計上問題を受けた政治資金の透明化策についての提言も取りまとめた立場だった。
 法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「今回の抜け道は、意図的に残されてきたように見える」とした上で、「関係団体で集めた資金であっても、他の政治団体に移せば何に使われたのか分からなくなる点が問題だ。法改正の積み残しを十分理解した、いわば『確信犯』だ」と批判する。
 さらに白鳥氏は、現在の政治とカネを巡る議論が、政治資金パーティー収入を裏金化していた自民党派閥の問題にのみ矮小化されているとして「派閥の裏金問題では政治団体の収入面ばかりが注目されるが、支出面からも政治資金の透明性を追及する必要がある」と指摘した。
 ▽「せこいやり方」
 同様の手法は閣僚でも表面化。新藤義孝経済再生担当相の関係団体である「自民党埼玉県第2選挙区支部」が、08~22年に3億8483万円を使途公開基準の緩い「新藤義孝後援会」に寄付していた。後援会の15年間にわたる支出のうち9割以上で使途明細がなかった。
 新藤氏の事務所は代理人弁護士を通じて「寄付は後援会の活動経費を賄うものだ。後援会への寄付や後援会の支出は、政治資金規正法にのっとり適正に処理し、報告している」としている。
 野党は、茂木氏の資金移動問題を「支出隠しの脱法行為」(立憲民主党の長妻昭政調会長)と批判を強める。立民の蓮舫参院議員は、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件に続く「新たな裏金疑惑」と問題視。日本維新の会の藤田文武幹事長は「政治の信頼がなくなる。せこいやり方だ」と切り捨てた。

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