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【損保カルテル大量処分】契約欲しさに株式保有 いびつな慣行、競争阻害

 損害保険大手4社がカルテル問題を巡り、社長ら幹部計100人を超える大量処分に踏み切った。保険契約欲しさに顧客企業の株式を保有したり、商品を購入したりするいびつな商慣行を改めるきっかけとしたい考えだ。金融庁は保険商品の内容と関係のない要素が契約を左右し、競争が阻害されたと問題視している。長年続いた悪弊を断ち切るよう厳しく監督する。

損保大手4社の主な政策保有株
損保大手4社の主な政策保有株

 ▽自腹でケーキ購入
 カルテル問題の温床となったのは、大企業向けの共同保険だ。複数の損保が相乗りして契約し、事故時に保険金の支払いを分担することで、巨額の保険金発生に備える。各損保の引き受け割合は保険料や補償範囲ではなく、顧客企業の株式をどれだけ保有しているかや、商品・サービスの購入実績が重要な要素となった。「自腹を切ってクリスマスケーキを買ったり、休日返上でイベントの誘導係をしたりする営業はもうやめるべきだ」。営業経験のある損保関係者は口をそろえる。
 ただ共同保険の仕切り役となる幹事社の損保と顧客企業には通常、長い付き合いがある。顧客企業側が幹事社を変えたがらず、現状維持を求める場合もある。「頑張って保険料の見積もりを安く出しても幹事社にはなれない」(損保関係者)。営業担当者の競争意欲は失われ、入札で他社の提示額からかけ離れないよう価格をそろえるカルテル行為が横行した。
 ▽緊張感
 損保4社は今後、6兆円を超える政策保有株を売却する。こうした株は「保険取引の維持・強化」のためで投資目的とは区別される。上位には自動車メーカーや商社の銘柄が並ぶ。「政策保有株の保有状況に応じて保険契約の配分を決めるのは鉄道関連の企業が多い」(損保関係者)との証言もある。金融庁幹部は「適切な保険を提案するという基本に戻る必要がある」と指摘する。
 取引関係にある企業同士がお互いの株式を持ち合うことは、主に海外投資家から長く批判されてきた。本来成長のために回す資金が減り、安定株主として支え合うことで経営の緊張感が薄れるとの指摘だ。4社には業界内で競争を取り戻すだけでなく、政策保有株の売却で得た資金を企業価値の向上に振り向けることも課題となる。

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