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【衆院憲法審】裏金影響、憲法論議停滞 自・立反目、見えぬ着地点

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の影響で、今国会の憲法論議が停滞している。憲法改正を党是に掲げる自民は衆院憲法審査会での議論を進めたいものの、立憲民主党は裏金事件の処分対象となり得る自民議員が憲法審の委員に含まれていると非難。両党の反目はやまず、着地点は見通せない。

第91回自民党大会で演説する岸田首相=17日、東京都内
第91回自民党大会で演説する岸田首相=17日、東京都内
憲法論議を巡る主な政党の立場
憲法論議を巡る主な政党の立場
第91回自民党大会で演説する岸田首相=17日、東京都内
憲法論議を巡る主な政党の立場

 ▽あり得ない
 「乱暴なやり方だ。来週の開催もゼロだ。全くあり得ない」。21日、国会。衆院憲法審の野党筆頭幹事・逢坂誠二氏(立民)は、憲法審幹事懇談会の開催が森英介会長(自民)の職権で決まったことに怒りをあらわにすると「欠席する」と記者団に表明した。共産党も同調し、幹事懇は程なく流会となった。
 立民が反発するのは森会長の運営手法だけではない。憲法審に、政治資金収支報告書の不記載があった下村博文氏ら自民議員5人が所属していることも問題視している。
 逢坂氏は開催の前提として、自民が下村氏らを処分した場合のメンバー交代や、裏金の使途について、詳細な説明が不可欠との立場を堅持する。
 これに対し、与党筆頭幹事・中谷元氏(自民)は記者団の前で「立民はずっと引き延ばしている。貴重な時間が失われ残念だ」と批判。故中山太郎元衆院憲法調査会長(自民)下での与野党協調を重視し円満に審議を進める「中山方式」を引き合いに「政局を持ち込むな」と訴える。
 ▽警戒
 憲法を巡っては、岸田文雄首相が事あるごとに改正へ意欲を示す。17日の党大会では「総裁任期中に実現するとの思いで条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する」と力説。自民は、緊急事態や自衛隊明記に関する条文起草機関の設置を盛り込んだ2024年運動方針を決定した。
 逢坂氏は、首相の「加速」発言も問題視し、自民ペースで憲法論議が進みかねないと警戒する。
 22年は2月に参考人質疑、23年は3月上旬に自由討議を行った衆院憲法審。今年は幹事選任の入り口にも立てない。
 改憲に積極的な日本維新の会の幹部は「裏金問題は憲法審と関係ない。立民抜きでも粛々と実施すべきだ」と業を煮やす。国民民主党幹部も「立民は単なる駄々っ子だ」と突き放す。
 とはいえ野党は裏金事件の真相究明が必要との認識で一致し、衆院での追及継続へ安倍派幹部ら6人の証人喚問を与党に求め、厳しく対峙する。果たしてそれと切り分ける形で憲法審は開かれるのだろうか―。自民重鎮は「与野党が妥協できるとは思えない。当分難しいだろう」と踏む。

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