テーマ : 読み応えあり

【円安株高進行】動かぬFRB、日銀と差 大統領選激戦で波乱も

 日銀のマイナス金利解除後も円安基調は変わらず、歴史的な高値圏にある日本株がさらに買われた。米連邦準備制度理事会(FRB)が5会合連続で政策金利の据え置きを決定。インフレ警戒から拙速な利下げには動けず、政策金利の高止まりが続く米欧中央銀行と、ようやく正常化に動く日銀との違いが要因だ。ただ、激戦模様の米大統領選を控え、米国の政策運営の先行きは波乱含みだ。

米首都ワシントンにあるホワイトハウス=20日(共同)
米首都ワシントンにあるホワイトハウス=20日(共同)
米ニューヨーク市の移民街の店で料理を作るアリさん=16日(共同)
米ニューヨーク市の移民街の店で料理を作るアリさん=16日(共同)
日米欧の金融政策
日米欧の金融政策
米首都ワシントンにあるホワイトハウス=20日(共同)
米ニューヨーク市の移民街の店で料理を作るアリさん=16日(共同)
日米欧の金融政策

 ▽警戒
 「インフレ率は依然高すぎる」。FRBのパウエル議長は20日の記者会見冒頭、静かな口調で切り出した。適度な物価上昇率を2%と定めるFRB。この日公表した見通しでは、目安とする個人消費支出(PCE)物価指数の前年同期比上昇率は2024年10~12月期でも2・4%と、インフレ退治になお時間を要することを示唆した。
 インフレ再燃を警戒し「確信を得られるまで利下げは適切ではない」と繰り返すしかなかったパウエル氏。それでも足元の金利誘導目標は5・25~5・5%と01年以来の高水準で、利下げ開始の時期を探る段階だ。今年6月にも利下げに踏み切るとみられている。
 同様に、物価高と格闘してきた欧州中央銀行(ECB)も4会合連続で政策金利の据え置きを決定。過去の積極利上げの結果、大きな利下げ余地が生まれ、転換時期を探る展開となっている。
 ▽ドル高継続
 マイナス金利政策の解除など金融政策の正常化路線に踏み出した日銀。植田和男総裁は19日の会見で「為替の短期的な動きについてはコメントを差し控えたい」と言及を避けたものの、日本政府内には米欧との金利差が縮小に向かい、円高が進むことで「生活苦を和らげる物価高抑制につなげたい」(経済官庁幹部)との期待もあった。
 ただ、日銀が早期に追加利上げに動くとの見方は市場で広がりを欠き、一時1ドル=151円台まで円安が進行。業績押し上げへの期待から輸出関連株が買われ、21日の東京株式市場では日経平均株価が終値の最高値を更新した。米ノートルダム大のリード准教授は「米国の高金利が世界中から資金を呼び込み、ドル高が継続する」とみる。
 一方、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、FRBの利下げ姿勢が維持されている限り「金利差縮小が意識されて円高方向に向かう」と分析。円高で一時的に株価が下がっても「堅調な企業業績を背景に株価の上昇基調は続く」と指摘した。
 ▽揺らぎ
 「動かぬFRB」の裏側で、米国内では11月の大統領選に向けた舌戦の激化で分断の影がじわじわと色濃くなっている。
 「米経済を築いたのは移民なのに…」。ニューヨーク市の移民街で45年間、料理店を営むアリさん(70)はため息をつく。移民問題が大統領選の争点に浮上。トランプ前大統領は中南米からの越境者を念頭に「動物だ」とまでやゆする。自身も1960年代にエジプトから移住したアリさんは、懸念を隠せない。
 FRBも揺らぐ。バイデン大統領は「(年内に)金利が下がる」と発言し、禁じ手と言える政策見通しにまで踏み込み、景気維持へなりふり構わぬ姿勢を示す。一方、パウエル氏が2026年まで任期を残す中、トランプ氏の返り咲きを見据え、早くも複数のFRB議長候補の名前が取り沙汰されている。(ワシントン、東京共同=金友久美子、藤原章博)

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞