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【こども家庭庁発足1年】少子化対策、実現に難路 日本版DBS、調整力不足

 子ども政策の司令塔として「こども家庭庁」が発足してから4月で1年。岸田政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」の取りまとめに当たったが、実効性や財源確保に疑問の声も上がり、難路が待ち受ける。子どもにかかわる仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設を巡っては調整力不足も目立った。重要課題が山積する中、真価が問われる。

こども家庭庁を巡る経過
こども家庭庁を巡る経過

 ▽効果
 2023年の出生数は75万8631人(厚生労働省の速報値)と過去最少を更新。少子化は「静かな有事」とされ、政府は23年12月に「こども未来戦略」を閣議決定、今年2月に関連法案を国会提出した。
 児童手当や育児休業給付の拡充、保育サービスの充実などに、今後3年間で年最大3兆6千億円を投入し「前例のない規模で子ども・子育て政策の抜本的な強化を図る」(岸田文雄首相)。これに対し、2月の衆院予算委員会の中央公聴会に出席した鈴木亘学習院大教授は、未婚対策の不足を挙げ「出生率が上がる効果は学術的に見て、ほぼない」と疑問を呈した。
 財源の柱として創設する「子ども・子育て支援金」も批判の的となっている。企業や幅広い世代で支えるとの理念で、公的医療保険料に上乗せ徴収する仕組みだが、野党は「事実上の子育て増税」と攻勢を強める。
 ▽仕込み期間
 「日本版DBS」創設法案を巡っては、いわゆる文教族の与党議員から、性犯罪歴の照会期間が短すぎると異論が噴出。「拘禁刑以上は刑終了後20年」を「法制上の限界」としたが、政府関係者は「与党説明のための人手が足りない」と漏らした。
 こども家庭庁幹部は、重要政策の準備に追われたこの1年を「仕込み期間」と表現する。昨年12月に策定した政策指針「こども大綱」は、全ての子ども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な状態で生活を送ることができるのが「こどもまんなか社会」と定義した。社会機運の醸成や、児童手当の拡充、DBS創設などを通じ、子育て世帯に支援の実感を持ってもらうことを目指す。
 一方で、子どもを取り巻く状況は、いじめや自殺、虐待、貧困、ヤングケアラーなど深刻さを増している。いずれも文部科学、厚生労働、法務といった各省庁にまたがるテーマだけに、政府関係者は「まだ十分に踏み込めていないところはあると思うが、司令塔機能を少しずつ果たしていきたい」と話す。

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