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ピザ、パスタに昆虫粉? 伊で生産開始、議論紛糾 伝統食材へのこだわり強く

 ピザやパスタなど小麦粉を使った料理が有名なイタリアで、昆虫由来の食用粉末の製造が始まった。気候変動の影響で食料不足が懸念される中、昆虫食は新たな栄養源として注目されている。ただ従来使用されてきた食材へのこだわりが強いイタリアでは「伝統料理に使うべきではない」と議論が紛糾している。

飼育されているコオロギ=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
飼育されているコオロギ=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
コオロギを使って製造した粉末=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
コオロギを使って製造した粉末=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
冷凍にされたコオロギを手にするホセ・チャンニ氏=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
冷凍にされたコオロギを手にするホセ・チャンニ氏=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
昆虫を使った粉末入りのパスタ(ニュートリンセクト提供・共同)
昆虫を使った粉末入りのパスタ(ニュートリンセクト提供・共同)
イタリア・ローマ、モンテカッシアノ
イタリア・ローマ、モンテカッシアノ
飼育されているコオロギ=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
コオロギを使って製造した粉末=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
冷凍にされたコオロギを手にするホセ・チャンニ氏=2月23日、イタリア・モンテカッシアノ(共同)
昆虫を使った粉末入りのパスタ(ニュートリンセクト提供・共同)
イタリア・ローマ、モンテカッシアノ

 「キリキリキリ」。2月下旬、イタリア中部モンテカッシアノにある昆虫食会社「ニュートリンセクト」には、コオロギの甲高い鳴き声が響いていた。約千平方メートルの工場内に1千万匹を飼育しており、最高経営責任者(CEO)のホセ・チャンニ氏は「薬品などを使わず、卵からここで育てている」と説明する。
 1月から食用粉末の製造・販売を始め、レストランなどで試験的に使われている。少しなめてみると、ヘーゼルナッツのような香りでさっぱりとした味だった。
 売れ行きは好調だといい、現在は月間2トンの生産だが、年末までに5トンに増やす計画だ。まだ1キロ当たり約60ユーロ(約1万円)と高価だが、チャンニ氏は「将来的には年間200トンの生産を目指しており、そうなれば価格も下がっていくはずだ」と意気込む。
 昆虫食はタンパク質などの栄養価が高い上、家畜の飼育に比べて温室効果ガスの排出も少ないとされる。国連食糧農業機関(FAO)が2013年の報告書で推奨し、食料や飼料としての活用に注目が集まった。欧州連合(EU)は23年1月、コオロギなど複数の昆虫を食品として承認した。
 ただイタリア人は食に対して保守的だと言われ、地元の農業生産者組合が21年に実施した調査では、54%が昆虫食に反対しており、賛成は16%にとどまった。
 イタリア政府は23年3月に新たな規則を発表。商品パッケージに昆虫食であることを明示することや、店舗では従来のパスタなどとは別の場所に陳列して販売するといった条件を設けた。ロッロブリージダ農業相は「われわれは昆虫食を食べない自由を保障しなければならない」と主張する。
 今年1月から欧州全域で広がった農業従事者らによる抗議活動でも、イタリアでは昆虫食への反対が含まれていた。
 チャンニ氏は「否定的なイメージが先行してしまっているだけだ。昆虫の食用粉末は小麦などと混ぜて販売するので、従来の農業生産とも共存できる」と強調した。(モンテカッシアノ共同=田中大祐)

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