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災害支援で寄付、その先は ふるさと納税、能登で拡大 競合多く、継続性課題 仲介サイトも苦悩

 能登半島地震の被災地に、ふるさと納税を通じた寄付が広がっている。自治体からは、制度本来の「地域を応援する」趣旨が見直されていると歓迎の声が上がるが、過去の災害の被災地では時間の経過とともに寄付が減少するなど、継続性が課題に。寄付を仲介するサイトの運営会社も、寄付を巡る返礼品競争と制度が目指す姿との差にジレンマを抱えている。

「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが昨年末に出した意見広告(同社提供)
「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが昨年末に出した意見広告(同社提供)
災害時にふるさと納税を活用して集まった寄付の例
災害時にふるさと納税を活用して集まった寄付の例
「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが昨年末に出した意見広告(同社提供)
災害時にふるさと納税を活用して集まった寄付の例

 ふるさと納税の主要仲介サイト3社は地震発生当初から、被害が甚大な石川県や富山県の自治体に対して返礼品のない寄付募集を開始。これまでに集まった寄付は、計49億円を超えた。
 ふるさと納税は、上限の範囲なら自己負担の2千円を除いた額が全額税控除されるため、手軽に寄付ができる。2008年の制度開始以降、東日本大震災をきっかけに、大規模災害の義援金や新型コロナウイルス禍での医療機関支援の受け皿として活用されてきた。
 一方、多額の支援を受けた後に、寄付額の減少に悩む自治体もある。18年の北海道胆振東部地震で、最大震度7を記録した厚真町には、同年度に約9億4千万円の寄付が集まった。だが、その後は徐々に減り、直近の22年度は半分以下の約4億3千万円にとどまった。
 町の主力返礼品は米だが、競合自治体は多い。寄付者の目は海産物など人気の品をそろえる自治体に向きがち。昨年には地震で崩壊した森林の再生事業などのクラウドファンディング(CF)型ふるさと納税も複数立ち上げたが、いずれも苦戦している。担当者は「災害を通じ広く町を知ってもらえたが、寄付のリピーターになってもらうのは難しかった」と話す。
 こうした現状に、災害支援やCF型の寄付募集を多く扱う「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京)も複雑な思いを抱える。
 同社はこれまで支援型寄付を積極的にPRする半面、お得さを前面に出した発信は控えていた。だが、近年は後発サイトに押され寄付額のシェアは減少。昨年には他社に追随する形で、寄付額に応じたポイント還元やテレビCMも始めた。
 返礼品競争に乗らざるを得ない状況に危機感を覚えた同社は、昨年末「ふるさと納税をやめよう」とあえて訴える意見広告を出した。企画した宗形深執行役員は「サイトを利用してもらう工夫は必要」とした上で「今の制度が地域にとって本当にベストなものなのか、一度考える時に来ている」と狙いを説明する。
 山梨大の藤原真史准教授(地方自治論)は「災害支援での活用は広がっているが全体規模から見ればわずか」と指摘。「返礼品を前提とした募集額に一定の上限を設けるなど、本来の『寄付』としての姿に近づけるべきだ」と見直しを求めた。

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