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【大谷通訳違法賭博】スポーツ賭博、急拡大の闇 合法州増加、選手会は懸念

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏が違法賭博に関与した疑いが発覚し、衝撃が走った。オンラインのスポーツ賭博は近年急成長し、米国の州では合法化を進める動きが加速。米大リーグ選手会が競技の公平性を損ねかねない急拡大の闇に懸念を示すなど、課題も多い。

米ニュージャージー州アトランティックシティーの、スポーツ賭博ができる施設=2022年(AP=共同)
米ニュージャージー州アトランティックシティーの、スポーツ賭博ができる施設=2022年(AP=共同)
米国スポーツ賭博合法化の州と大リーグとスポーツ賭博の動き
米国スポーツ賭博合法化の州と大リーグとスポーツ賭博の動き
米ニュージャージー州アトランティックシティーの、スポーツ賭博ができる施設=2022年(AP=共同)
米国スポーツ賭博合法化の州と大リーグとスポーツ賭博の動き

 ▽「野球賭けてない」
 大谷選手の活躍もあり、ドジャースが勝利したソウルでの開幕戦から一夜明けた21日。スポーツ専門局ESPNは、水原氏がスポーツ賭博にのめりこんでいった詳細を伝えた。2021年、賭博の胴元で捜査対象となっているボーヤー氏と知り合い、サッカーやプロバスケットボールNBAなどを対象とした賭博に興じた。借金は「雪だるまのように増えていった」という。
 水原氏は「野球には賭けていない」と答え、大谷選手の関与も否定。ただ同選手の口座から少なくとも450万ドル(約6億8千万円)が送金された。一度は「大谷選手も借金の肩代わりに同意した」としながら、発言を撤回したことも臆測を呼んだ。20日の試合後、ドジャースの選手らを前に、全て自分の責任と認め「ギャンブル依存症」を告白したという。
 大リーグは通算最多安打記録保持者のピート・ローズ氏が野球賭博関与で永久追放処分となった苦い歴史を持つ。新たにスター選手の通訳が違法賭博へ関わっていたとなれば、イメージダウンになりかねない。韓国での公式戦初開催という歴史的行事の最中。ドジャースの球団幹部は取材に応じず、ロバーツ監督は「その質問には答えられない」の一点張りだった。
 ▽合法化
 米国でスポーツ賭博が認められていたのはネバダ州など一部のみで、1992年に連邦法で州による運営が禁止された。
 ただ2018年に連邦最高裁がこの判断を無効とし、合法化の流れになった。スポーツ賭博をてこに税収増を図る州が解禁にかじを切り、現在は38州と首都ワシントンで認可されている。大谷選手が昨年まで所属したエンゼルスやドジャースが本拠を置くカリフォルニア州など違法のままの地域は、もはや少数派だ。
 米国外でもスポーツの賭けによる税収増の枠組みは認知されている。日本でも経済産業省が21年にまとめたスポーツクラブ産業についての提言で触れられ、慎重に議論が進行している。
 ▽警鐘
 大リーグのマンフレッド・コミッショナーは「野球に関心がない人も引き付けられる。人気を高める重要な要素だ」と語り、スポーツ賭博が市場拡大やファン開拓に不可欠と指摘する。この問題に詳しい元プロ野球選手の小林至桜美林大教授は「米国内でスポーツ賭博の市場は1200億ドル(約18兆円)とされ、年間20~30%で成長している。海外を含めた違法なものはそれを上回るともされ、スポーツ界では交流サイト(SNS)の活用に並ぶ成長の原動力」と話す。
 一方で米プロフットボールNFLでは近年、試合への賭けで処分される選手が続出。依存症に加えて選手が八百長に巻き込まれる不安もあり、大リーグ選手会のクラーク専務理事も「懸念事項だ」と警鐘を鳴らす。小林教授は「税収増を目的に合法化し、ガラス張りにした方が八百長などの不正は減る。合法化されていないからこそ、違法賭博がはびこる」と強調した。(ロサンゼルス、ソウル共同=益吉数正、白石明之、井上浩志)

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