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【東日本大震災13年】問われ続ける災害対策 東北の経験、次の備えへ

 東日本大震災はさまざまな教訓を残した。人口減少に拍車がかかった被災地の姿は、能登半島の将来と重ならないかと案じる声がある。初動対応や避難生活の課題は13年間で解決したとは言いがたい。東北の経験は生かせるのか。能登半島地震の復興やその先の巨大地震と向き合う日本の災害対策は問われ続ける。

牡鹿半島にある宮城県石巻市大原浜で、海岸周辺に散乱する大量のがれき。大原小学校(下)のグラウンドには「HELP(助けて)」などの文字が書かれている=2011年3月14日
牡鹿半島にある宮城県石巻市大原浜で、海岸周辺に散乱する大量のがれき。大原小学校(下)のグラウンドには「HELP(助けて)」などの文字が書かれている=2011年3月14日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
がれきに覆われた宮城県石巻市の牡鹿半島=2011年4月20日
がれきに覆われた宮城県石巻市の牡鹿半島=2011年4月20日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
空き地が目立つ宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
空き地が目立つ宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
東日本大震災の教訓と能登半島地震
東日本大震災の教訓と能登半島地震
牡鹿半島にある宮城県石巻市大原浜で、海岸周辺に散乱する大量のがれき。大原小学校(下)のグラウンドには「HELP(助けて)」などの文字が書かれている=2011年3月14日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
がれきに覆われた宮城県石巻市の牡鹿半島=2011年4月20日
牡鹿半島にある宮城県石巻市鮎川地区。津波で多くの家屋が跡形もなく押し流されていた=2011年3月14日
空き地が目立つ宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
宮城県牡鹿半島の鮎川地区=9日(ドローンから)
東日本大震災の教訓と能登半島地震

 ▽空き地だらけ
 「ここであったことを二度と起こしては駄目だ」。8日、宮城県石巻市から突き出た牡鹿半島。先端に近い鮎川地区ですし店を営む古内勝治さん(80)は、閑散とした街を思い語気を強めた。
 地区はかつて日本有数の捕鯨基地として栄えた。だが反捕鯨の動きを背景に過疎化が進み、震災直前の人口は約1400人。これが震災後に加速し、今は約600人まで落ち込んだ。他方で石巻市の中心エリアは約15%減にとどまっている。
 鮎川地区では津波で住民18人が犠牲になり、約340戸が全壊した。市は希望した世帯の高台移転を進めたが、用地取得などに時間がかかり、住めるまでに5年かかった。住民の一人は「市中心部より復興が遅れた」と言い切る。
 この間に「遠くの家族と同居する」などと地区を離れる人が続出。高台の移転先も5カ所に分散し、古くからのコミュニティーは壊れた。
 飲食店や商店があった沿岸部は今、空き地だらけだ。古内さんは「買い物は不便で、子どもは少ない。このままでは病院も縮小する」と嘆いた。
 ▽重なる悪条件
 東日本大震災の教訓はいくつもあるが、能登地震で生かされなかった点も少なくない。
 大震災では被害の全容把握が遅れ、救援や復旧活動に手間取った。政府は情報集約ネットワークの運用改善を進めているものの、能登はアクセスの悪い地形に加え、道路寸断など悪条件が重なって難航した。
 救助や物資の面でも、自衛隊は悪路に阻まれ活動を制限された。消防は出動指示を受けた11府県の隊員のうち、発生72時間以内に被害が集中する地域で活動できたのが約半数にとどまった。
 大震災で3800人を超えた災害関連死は、避難所の衛生環境が要因の一つとされる。能登の避難所も「震災の時と変わらない」(現地入りした医師)との指摘がある。
 ▽課題は明確
 11日、石川県輪島市の無職竹田良孝さん(82)は「町中には崩れた家屋のがれきが山積みだ。復興の先行きが見えない」とつぶやいた。同市などの奥能登も人口減少が進む地域で、将来に不安を抱く住民もいる。
 県の災害危機管理アドバイザーを務める室崎益輝・神戸大名誉教授は「このままだと被災者は、糸が切れたたこのように出ていく」と指摘。住民が戻りたいと考える街の具体的ビジョンを描くのが大事だと強調した。
 今後も南海トラフ巨大地震などの発生が予測される。被害が想定される過疎地、へき地の中には、大災害のたびに浮かぶ課題に向き合おうとする動きも見られた。
 人口減少が進む徳島県美波町の由岐湾内地区は住民が主体になり、大津波に備えて、災害前から高台へ移り住む検討を進めている。静岡県・伊豆半島の土肥地区(伊豆市)で整備中の津波避難施設は、観光客ら1200人を収容できて一時的な食料も備蓄する。市職員は「東日本と能登、二つの震災が私たちの課題を明確にした」と話した。

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