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【宝塚俳優急死問題】不十分調査、長期化招く スポンサー更新迫り急転

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の俳優の女性(25)が急死した問題を巡る、親会社阪急阪神ホールディングス(HD)と遺族側の交渉は合意まで約半年を要し、長期化した。阪急側はブランド維持のため内部調査で早期の幕引きを図ったが、客観性を欠く不十分な結果に遺族側が反発。芸能界でのハラスメントに厳しい視線が向けられる中、スポンサー企業との契約更新の期限も迫り、阪急側は方針転換を余儀なくされた。

記者会見する(左から)宝塚歌劇団の村上浩爾理事長、阪急阪神HDの嶋田泰夫社長と大塚順一執行役員=28日午後、大阪府豊中市
記者会見する(左から)宝塚歌劇団の村上浩爾理事長、阪急阪神HDの嶋田泰夫社長と大塚順一執行役員=28日午後、大阪府豊中市
記者会見する阪急阪神HDの嶋田泰夫社長(上)と兵庫県宝塚市の宝塚大劇場(下)、急死した女性俳優と母親のLINEでのやりとり(右)を組み合わせたコラージュ(LINEの画像は遺族代理人提供)
記者会見する阪急阪神HDの嶋田泰夫社長(上)と兵庫県宝塚市の宝塚大劇場(下)、急死した女性俳優と母親のLINEでのやりとり(右)を組み合わせたコラージュ(LINEの画像は遺族代理人提供)
記者会見する(左から)宝塚歌劇団の村上浩爾理事長、阪急阪神HDの嶋田泰夫社長と大塚順一執行役員=28日午後、大阪府豊中市
記者会見する阪急阪神HDの嶋田泰夫社長(上)と兵庫県宝塚市の宝塚大劇場(下)、急死した女性俳優と母親のLINEでのやりとり(右)を組み合わせたコラージュ(LINEの画像は遺族代理人提供)

 ▽契約期限
 「時間がかかりすぎだとの指摘は真摯に受け止める」。28日に記者会見した阪急阪神HDの嶋田泰夫社長は釈明した。
 昨年11月に大江橋法律事務所(大阪市)がまとめた報告書はハラスメントの存在を否定。だが、遺族側が12月にヘアアイロンによるやけどの写真を公にすると、阪急側は報告書の概要版を歌劇団公式サイトから削除した。
 今年1月の面談で阪急側はハラスメントの存在を認めたが、詳細な事実認定で双方の主張が食い違い、交渉は停滞した。遺族側代理人の川人博弁護士は「(阪急側が)上級生を守ろうとしている」と糾弾。交渉決裂の場合は提訴も示唆した。
 3月には、歌劇団の事業への影響が本格化した。ゲームソフト大手スクウェア・エニックスが協力する「ファイナルファンタジー」の公演が延期。年度末でCM起用中の俳優の契約更新も迫り、阪急側は追い詰められた。あるスポンサー企業は、3月中旬に阪急首脳から「謝罪をするから待ってほしい」との趣旨の連絡を受けた。
 ▽ブランド
 阪急側には自社ブランドのイメージ低下への懸念があったもようだ。阪急電鉄沿線は関西有数の高級住宅地が点在し、阪急百貨店は富裕層をターゲットにしている。
 一度は「(いじめがあったと言うなら)証拠を見せていただきたい」(歌劇団の村上浩爾理事長)と強気な姿勢を見せた阪急側。旧ジャニーズ事務所の性加害問題を契機に芸能界でのハラスメントへ批判が高まっており、歌劇団にも交流サイト(SNS)を中心に非難が集中した。
 慶応大の牛島辰男教授(企業戦略論)は、ハラスメントが疑われる企業と関われば責任を問われかねず「当事者や社会が納得できる解決をスポンサー側が要求した可能性がある」と指摘した。

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