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【JR芸備線再構築協議会】廃線警戒、進まぬ議論 地方鉄道再編の試金石

 全国初となる「再構築協議会」の議論が始まった。地方鉄道を巡っては、事業者と沿線自治体が既に話し合いの場を設けている地域もある。ただ鉄路の維持を前提にする自治体側と、廃線を視野に入れる事業者側との認識の隔たりは大きい。こうした状況を打開し、持続可能な公共交通の姿を描けるのか。芸備線の議論は試金石となる。

備後庄原駅に停車するJR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
備後庄原駅に停車するJR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
JR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
JR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
広島市で開かれた「再構築協議会」で議長を務めた益田浩・国交省中国運輸局長=26日午前
広島市で開かれた「再構築協議会」で議長を務めた益田浩・国交省中国運輸局長=26日午前
広島市で開かれたJR芸備線の一部区間の存廃を話し合う「再構築協議会」の初会合=26日午前
広島市で開かれたJR芸備線の一部区間の存廃を話し合う「再構築協議会」の初会合=26日午前
備後庄原駅に停車するJR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
JR芸備線の車両=2023年10月、広島県庄原市
広島市で開かれた「再構築協議会」で議長を務めた益田浩・国交省中国運輸局長=26日午前
広島市で開かれたJR芸備線の一部区間の存廃を話し合う「再構築協議会」の初会合=26日午前

 ▽行司役
 「鉄道は設備の維持修繕で固定的な経費がかかる。収支率の観点で厳しい状況だ」。26日の再構築協議会の初会合で、JR西日本の広岡研二広島支社長は芸備線を維持する難しさを訴えた。利用人数は大型バスでも輸送可能な規模だとも言及した。
 これに対し、地元自治体は廃線に慎重な立場を崩さなかった。岡山県の上坊勝則副知事は「地域の公共交通を支える重要な存在だ」。広島県の玉井優子副知事は「あらゆる取り組みを展開し、芸備線の可能性を最大限追求することが必要だ」と求めた。
 協議会の行司役を務める国土交通省中国運輸局の益田浩局長は記者会見で「存廃を国が決めるつもりはないが、一定の方向性が見えた段階ではしっかりと後押ししていく」と述べ、国として関与する姿勢を強調した。
 ▽膠着
 JR各社は各地の不採算路線の在り方について地元自治体に協議入りを打診してきた。ただ両者がいったん話し合いのテーブルに着いても、議論が膠着するケースが目立つ。JR大糸線糸魚川(新潟県糸魚川市)―南小谷(長野県小谷村)間もその一つで、2022年に話し合いの場が設けられた。
 昨年5月の会合では、利用促進や活性化策を優先して検討する自治体の方針に対し、JR西の担当者が「遺憾と言わざるを得ない」と発言。今月14日の会合では、まず利用促進策を実施し、JR西が求める「持続可能な方策」は期限を定めず一定期間内に取りまとめることで合意した。姿勢の違いは明確だが、何とか物別れを避けた格好だ。
 千葉県ではJR東日本の申し入れを受け昨年5月、君津市の久留里線久留里―上総亀山間の在り方を検討する自治体や住民代表らによる会議が発足。沿線住民を対象に昨秋実施したアンケートでは、通勤や通院、買い物で鉄道を利用するとしたのは1割未満だった。
 本格的な論議はこれからで、結論がまとまる時期や方向性は見通せない。検討会議座長の藤井敬宏・日本大特任教授は芸備線協議会について「法改正の趣旨に沿った、相互理解を図りながらの議論を期待したい」と今後の展開を注目する。
 ▽信頼
 昨年10月にJR西から芸備線の再構築協議会設置の申請が出て以降、国交省内では関係自治体の対応に神経をとがらせてきた。自治体の信頼を失い「廃線ありき」との印象を与えれば、議論が前に進まない恐れがあるためだ。自治体の求めに応じ、協議会への参加意向を尋ねる意見聴取の回答期限を延長したり、存廃協議対象区間外の自治体の参加を認めたりしてきた。国交省幹部は「丁寧に対応するに尽きる。急いでも何も良いことはない」と説明する。
 地元自治体が廃線を警戒するのは、バス運行などに転換されれば財政負担が増えることが懸念されるためだ。別の国交省幹部は「この仕組みを使うとろくなことにならないとは思ってほしくない。地域公共交通が良いものになったと思ってもらえるようにしたい」と話した。

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