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【電気火災対策】「住民が防ぐ」意識を 防止装置転売疑いも

 電気配線のショートなどによる電気火災は、過去の地震時にも多発し、対策の必要性が指摘されてきた。揺れを感知すると電気供給を自動遮断し、出火を防ぐ装置「感震ブレーカー」は、能登半島地震を受けて注目が集まる。東京都などは無償配布し普及を目指すが、インターネットのサイトでは“転売”が疑われる出品例も。専門家は「電気火災は住民が防ぐ」という意識の浸透を訴える。

地震による大規模火災でほぼ全域が焼失した石川県輪島市の「輪島朝市」周辺=5日
地震による大規模火災でほぼ全域が焼失した石川県輪島市の「輪島朝市」周辺=5日
主な感震ブレーカーのタイプ
主な感震ブレーカーのタイプ
地震による大規模火災でほぼ全域が焼失した石川県輪島市の「輪島朝市」周辺=5日
主な感震ブレーカーのタイプ

 ▽一過性懸念
 「石川県輪島市の大火災の影響で、問い合わせや販売が増えている」。感震ブレーカーを製造、販売するリンテック21(東京)の担当者は語る。接続機器への電気供給を自動遮断するコンセントタイプなどを取り扱う。
 2011年の東日本大震災で起きた火災の7割近くは電気が原因だとして、政府は感震ブレーカー普及を掲げてきた。屋内全体の電気供給を止める分電盤タイプなどもある。ただ、22年の内閣府世論調査で設置済みとの回答は5・2%だった。
 同社担当者は「一時は売り上げが増えていたが、6年ほど前から減ってしまった。今回は一過性で終わらないでほしい」と話した。
 ▽必然
 能登半島地震で大火災が起きた輪島市の「輪島朝市」周辺は、古い木造住宅などが次々に燃えて約4万9千平方メートルが焼失した。総務省消防庁消防研究センターは、電気火災の可能性を指摘する。
 延焼を食い止めたのは、窓が小さく外壁に耐火性能があり、建物間の道路幅など一定の距離が保たれた住宅。消防研究センターの担当者は「被害を免れたのは奇跡ではなく必然だ」と備えの重要性を強調する。
 しかし、高齢化が進み、耐火住宅への建て替えはなかなか進まないのが実情。内閣府は18年、感震ブレーカー普及など対策を進める地域を指定するよう促したが、呼応した自治体はない。
 ▽意識の低さ
 対策に独自に取り組む自治体もある。東京都は23年度から、木造住宅密集地域の約32万世帯を対象にコンセントタイプを無償配布し、江戸川区も都事業の対象から外れる世帯に配布を進める。
 ただ、ネット上ではフリーマーケットなどのサイトに、配布と同じ製品が「新品・未使用」として出品されるケースが散見される。
 メーカー関係者は「多くは配布を受け売却しているとみられる。出火防止の効果が理解されていない」と漏らした。江戸川区担当者は「首都直下型地震での火災を減らすため設置の重要性を訴えてきた。売却されているなら残念だ」と話した。
 東京理科大の関沢愛教授(建築・都市防災)は「そもそも電気火災で大きな被害が生じるという認識が広まっていない」と分析。防災意識の低さが設置状況に表れているとして「行政は住民が出火を防げる時代であるとしっかり周知するなど、感震ブレーカーの普及を急ぐべきだ」と訴えた。

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