テーマ : 読み応えあり

【防衛インフラ整備】部隊展開へ足場づくり 地元に期待と不安交錯

 政府は、自衛隊や海上保安庁による有事の活動に備え、空港・港湾といった公共インフラの整備に乗り出す。部隊の展開に必要な足場を増やし、防衛力強化の中で重視する戦闘継続能力(継戦能力)を高める狙い。国主導で施設が充実すれば観光や物流、防災に活用できるとメリットを強調するが、軍事拠点と見なされ攻撃対象となるリスクもはらむ。地元では期待と不安が交錯しており、丁寧な対応が不可欠だ。

有事での特定利用空港・港湾の活用イメージ
有事での特定利用空港・港湾の活用イメージ

 ▽利点強調
 「安全保障に資する重要な取り組みだ。災害時にも自衛隊などの活動が円滑に行われるようになる」。香川県の池田豊人知事は25日の記者会見で、県管理の高松港が「特定利用空港・港湾」に指定されることを歓迎した。県によると、国直轄での岸壁耐震強化事業が促進されるという。
 有事の自衛隊や海保の使用に備えたインフラ整備は、2022年12月に策定した国家安全保障戦略に基づく。防衛に資する研究開発やサイバー、国際協力と合わせ「総合的な防衛体制の強化」の柱の一つに位置付けた。
 指定された空港では滑走路や誘導路を整備し、駐機場の新設も視野に入れる。港湾では防波堤や岸壁の工事、航路や停泊地の拡充を進める。政府は「民生利用を主とする」と説明。空港は利便性が高まり航空需要が拡大するとし、港湾ではフェリーや大型クルーズ船の受け入れ環境が整うと地元に利点を強調する。
 ▽拠点分散
 だが、整備の目的はあくまでも防衛力強化だ。政府は長射程ミサイルなどの重要装備について、国内に分散配置して攻撃による被害を減らす構想を練る。防衛省関係者は、特定利用空港・港湾の指定も「同様の考え方だ。全国各地に拠点が増えれば、継戦能力が高まる」と解説する。
 有事の際、自衛隊は基地から民間の空港や港湾に戦闘機や輸送機、輸送艦などを移動させ、部隊や物資の輸送への利用を想定。海保は警備や人命救助に向け航空機、巡視船を展開する予定だ。
 ▽打ち消し躍起
 高松市の市民団体は、高松港の指定に反対する1万筆超の署名を県に提出した。大熊正樹事務局長は「武力による抑止が前面に出ると、戦争を招くのではないか」と懸念を示す。
 沖縄県では国管理の那覇空港と、石垣市が管理する石垣港が指定されるが、県は政府の説明が不十分だとして、現時点で県管理施設の指定には否定的な立場だ。県幹部は「自衛隊による日常的な使用など不安は尽きない」と話す。
 政府はこうした見方の打ち消しに躍起だ。3月、内閣官房のウェブサイトに特定利用空港・港湾整備に関するQ&Aを掲載。「攻撃目標となるのではないですか」との設問に「可能性が高まるとは言えない」と否定し、こう強調した。「わが国への攻撃を未然に防ぐ抑止力を高めるものであり、ひいては国民の安全につながるものです」

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞