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【陸自ヘリ墜落】「見切り発車」の飛行再開 軍用機事故、住民置き去り

 陸上自衛隊は14日、10人が死亡した昨年4月のUH60JAヘリコプター事故の原因が特定できないまま、同型機の飛行再開を決めた。くしくもこの日、墜落事故で運用をやめていた輸送機オスプレイが約3カ月ぶりに沖縄の空を飛んだ。ともに詳細な原因は明らかにされておらず、置き去りにされた地元住民は怒りを募らせる。「見切り発車」の日米の対応に、専門家も「不安を解消せずに飛行を再開させるのは、おかしい」と批判する。

米軍普天間飛行場から離陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午前、沖縄県宜野湾市
米軍普天間飛行場から離陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午前、沖縄県宜野湾市
米海兵隊のMV22オスプレイが駐機する米軍普天間飛行場。飛行再開を前に準備する隊員の姿が見られた=14日午前、沖縄県宜野湾市
米海兵隊のMV22オスプレイが駐機する米軍普天間飛行場。飛行再開を前に準備する隊員の姿が見られた=14日午前、沖縄県宜野湾市
米軍普天間飛行場に着陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午後、沖縄県宜野湾市
米軍普天間飛行場に着陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午後、沖縄県宜野湾市
沖縄県宮古島付近の事故現場海域から引き揚げられる陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月
沖縄県宮古島付近の事故現場海域から引き揚げられる陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月
事故現場海域から引き揚げられ、ブルーシートで覆われた陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月、沖縄県宮古島市
事故現場海域から引き揚げられ、ブルーシートで覆われた陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月、沖縄県宮古島市
陸自UH60JAヘリの高度とエンジン出力の推移
陸自UH60JAヘリの高度とエンジン出力の推移
米軍普天間飛行場から離陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午前、沖縄県宜野湾市
米海兵隊のMV22オスプレイが駐機する米軍普天間飛行場。飛行再開を前に準備する隊員の姿が見られた=14日午前、沖縄県宜野湾市
米軍普天間飛行場に着陸する米海兵隊MV22オスプレイ=14日午後、沖縄県宜野湾市
沖縄県宮古島付近の事故現場海域から引き揚げられる陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月
事故現場海域から引き揚げられ、ブルーシートで覆われた陸上自衛隊UH60JAヘリコプター=2023年5月、沖縄県宮古島市
陸自UH60JAヘリの高度とエンジン出力の推移

 ▽発表翌日
 プロペラの風切り音が、けたたましさを増し、灰色の機体がゆっくり浮き上がった。14日午前、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場。垂直に浮上したオスプレイは空中にとどまった後、市街地上空を通過して飛び去った。
 米空軍所属のオスプレイは昨年11月、鹿児島県・屋久島沖で墜落し8人が死亡。その後オスプレイ全機種の飛行を世界中で停止していた。
 「準備が整った機体から順次飛行する」と防衛省が発表したのは今月13日。米軍は翌日さっそく再開に踏み切った。事故原因となった部品の不具合を特定したと日本側に説明したというが、詳細は公表されていない。宜野湾市の松川正則市長は取材に「説明がない。米軍には安全確保の徹底を強く求めたい」と険しい表情で語った。
 ▽失格
 陸自が公表したヘリ事故の調査結果によると、昨年4月6日午後3時54分ごろ、エンジン2基のうち、右側が緩やかに出力低下を始めた。高度は約330メートル。機内で異常を察知し、状況把握に努める音声が残っていた。
 37秒後、左側のエンジンも出力が低下し始め、高度がみるみる下がる。パイロットは何とか制御しようとしたが、最初の異常から86秒後、約95メートルの高さでフライトレコーダー(飛行記録装置)の記録が途切れた。ヘリは約4秒後、沖縄県・宮古島沖に墜落。わずか90秒間の出来事だった。
 ある陸自幹部は「事故から間もなく1年となる。その前に陸自として何とか結論を出したいとの雰囲気はあった」と打ち明ける。「原因がはっきり分からないまま乗るのは怖い。こんな状態で再開していいのか」。身内の現役ヘリパイロットも疑問を呈した。
 オスプレイと陸自ヘリの墜落事故は、いずれも基地がある地元に原因や対策が十分に説明されないまま、飛行再開を決断した点が共通している。
 流通経済大の植村秀樹教授(安全保障論)は「最近の政府は『丁寧な説明』という言葉ばかりを繰り返すが、中身が全く伴っていない」と非難。「安全、安心どころか住民は不安になるばかりで、対応としては失格だ」と切り捨てた。

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