テーマ : 読み応えあり

サービス残業増に懸念 医師「仕事の合理化必要」 4月から働き方改革

 大学病院など勤務医の長時間労働が問題になっている。4月から始まる残業時間を規制する「医師の働き方改革」に期待が集まる一方、業務の削減や効率化が進まない医療機関もあり、現場からは過度な時間抑制を危惧する声も。若手医師は「サービス残業が増えるだけではないか。仕事の合理化も一緒に進める必要がある」と訴える。

4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
医師の時間外労働の上限
医師の時間外労働の上限
4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
4月から始まる「医師の働き方改革」を前に、取材に応じる脳神経外科医の30代男性=5日、北海道内
医師の時間外労働の上限

 「月の時間外労働を80時間以内に収めるよう、病院から指示が出ている」。働き方改革を目前に控えた3月上旬、北海道の総合病院に勤務する脳神経外科医の30代男性が院内事情を打ち明けた。
 4月以降、勤務医の時間外・休日労働の上限が原則で年960時間に規制され、違反すれば罰則もある。12カ月で割ると80時間となり、病院側はこの時間を念頭に指示を出したとみられる。
 脳神経外科医は、急な呼び出しや緊急手術も多く勤務は不規則。他の診療科と比べても勤務時間が長いとされる。多くの医師が月150時間近く残業をしているが、実際の勤務時間を申請できていない。病院側の指示があるからだ。「人手不足もあり、80時間に収めるのは現実的に不可能」。男性は言い切った。
 男性は大学病院で働いたこともある。午前6時に自宅を出て、7時に職場へ。午前9時から翌日午前1時までメスを握ることも珍しくなかった。合間には、控室である医局のソファで仮眠を取り、日中は外来患者の診察もこなした。
 勤務医の中でも大学病院の医師は特に給料が安いとされ、大半は別の病院でアルバイトをしている。この男性も、丸2日働いた後、別の病院の当直に入り、寝不足のまま大学に戻って手術することもあった。
 当時は数日間自宅に帰れないことも珍しくなく、「生まれたばかりの子どもに会えず、つらかった」と振り返る。
 採血や患者移送は看護師らが行う病院が多いが、男性によると、大学病院では一般的に若手医師が担うという。一部の医療行為を医師から他職種に移す「タスクシフト」の導入も進むが、「大学病院は伝統的に若手の献身で成り立っており、過酷な環境で生き残ってきた教授ら上層部は労働環境改善への意欲が低い」と指摘する。
 一方、タスクシフトで医師の事務作業が大幅に軽減され、午後5時に退勤できる病院もあるという。男性は訴える。「勤務時間だけ減らせとなると、現場は回らない。国が主導して業務効率化やタスクシフトを進めなければ、医師一人一人の負担は変わらずサービス残業が増えるだけだ」

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞