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【2級河川の津波】コスト膨大、対策後回し 「国の財政支援必要」

 都道府県による2級河川の津波対策は「膨大なコスト」(自治体職員)がネックになり、発生頻度の高い大雨対策などより後回しにされていた。ただ実際に河川津波が起きれば大きな被害が生じる可能性もあり、国の継続的な財政支援を求める声は強い。減災のため早期避難に力を入れる自治体もある。

香川県が公開した河川津波のイメージ動画(同県提供)
香川県が公開した河川津波のイメージ動画(同県提供)
2級河川の津波対策工事を巡る主な意見や状況
2級河川の津波対策工事を巡る主な意見や状況
香川県が公開した河川津波のイメージ動画(同県提供)
2級河川の津波対策工事を巡る主な意見や状況

 ▽早いほう
 東日本大震災の河川津波で多数が犠牲になった宮城は、昨年9月、計画した2級河川31本の堤防のかさ上げなどを終えた。総延長60キロ超で、当初予定した工事期間は5年。だが「川ごとに異なる遡上範囲や堤防の高さを計測する必要があった」ことや、用地取得の手間から難航し、完成までの期間は2倍超に延びた。
 それでも、国の復興予算を使えた東北は早いほうだ。岩手は未完とはいえ水門の1カ所を残すだけ。福島も水門は完了し、堤防改修は東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域内のみ終えていない。
 一方で、使える国費が東北に比べて少ない自治体は遅れが目立つ。
 愛媛県は126本の2級河川の対策が必要だが、全て未着工で、123本は具体的な工事方法も決まっていない。県は2018年の西日本豪雨で被災した地域の防災工事を優先し、約250億円を投じている。財政力を考えると「総工費の想像もつかない」という河川津波対策はどうしても遅れるという。
 ▽自治体の不安
 共同通信の都道府県調査では、国に財政支援を求める声が相次いだ。復興予算も活用して工事を終えた青森は「大きな金額なので国費じゃないと無理」と断言する。
 現在でも国は、巨大地震を見越した国土強靱化の「5カ年加速化対策」などに基づき、事業費の半額を補助している。ただ5カ年対策は25年度が最終年度。直ちに補助が切れるわけではないものの、将来に不安を抱く自治体側は「必要な予算の継続的、安定的確保」(徳島など)を訴えた。
 ▽避難
 インフラ整備が遅れている分、避難の徹底で被害を避けようとする動きも少なくない。地域防災計画に河川津波の対策も盛り込んだ自治体は30近くあった。
 堤防工事の進捗率が約34%の香川は、最大クラスの地震で堤防が決壊し浸水の恐れがある地域の地図を作成。イメージ動画も公開して住民に早期避難を呼びかけている。

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