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【能登半島地震・コールトリアージ】緊急性低い通報、どう対応 「救助救急は3割」の例も

 災害時に殺到する119番の中には、急を要さない内容も多い。能登半島地震でも、消防によっては「災害救助や救急要請は3割程度だった」。緊急度を判断し、人命救助に優先順位を付けるコールトリアージ制度が必要との声もあるが、石川県内で導入していたのは2消防本部だけで対応が分かれているのが現状だ。今後、南海トラフ巨大地震などが想定され、専門家は「地震発生は予期できず、事前に大まかな対応策だけでも決めておくことが必要」と指摘する。

災害時のコールトリアージのイメージ
災害時のコールトリアージのイメージ

 ▽「停電、断水」
 「平時の約5倍」。1月1日午後4時以降、七尾市と中能登町を管轄する七尾鹿島消防本部の指令センターには多数の119番が入った。災害救助や救急の要請は全体の3割で残り7割は停電や断水、避難所の問い合わせ、家族の安否確認などだった。
 「多数の通報は急を要するものではなく、つながらなかった事案もあっただろう」。同本部指令課の担当者は対応に苦慮した初動を振り返る。その上で「本当に救助が必要なところに出動できたのか疑問がある。今回の地震を教訓とし、検証を重ね、制度導入を前向きに考えたい」と話した。
 ▽マニュアル困難
 金沢市消防局は、かほく市と津幡町、内灘町の消防本部と指令センターを共同運用している。市消防局によると1月1日午後4時以降に451件の119番を受信、「平時の約4倍」に上った。大半をライフラインなどの問い合わせが占めた。
 明文化した制度はないが、災害に応じて責任者の裁量が認められているため、類似した弾力的な運用をしているという。
 金沢市消防局の担当者は「複雑かつ多岐にわたる通報が想定され、緊急度を判別するマニュアルの作成は困難だ。単一的な行動となる思考停止のリスクなどもあり、制度の実効性が見いだせない」と答えた。
 ▽事前準備
 コールトリアージ制度を導入していた羽咋郡市広域圏事務組合消防本部は「一定の成果があった」という感触だ。ただ最も被害が集中した奥能登広域圏事務組合消防本部ではシステムが途中でダウンし、今後の検証が必要としている。
 広島国際大の安田康晴教授(救急現場活動学)は「事前に消防本部で大規模災害時に出動する優先順位を定めておけば、通信指令員は判断しやすくなる」と指摘。一方、市町村消防の対応には限界があるとし、「消防間の連携を図るため、指令センターは県単位などの広域化を進めることが重要だ」とした。

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