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【日米会談】内憂の両首脳、蜜月演出 「もしトラ」身構え

 日米両首脳は蜜月関係の演出に腐心した。裏金事件で政権基盤が揺らぐ岸田文雄首相。米大統領選でトランプ前大統領との激突が確実なバイデン大統領。共に「内憂」に直面し、首脳会談を政権浮揚につなげたい思惑が透ける。トランプ氏が当選した場合の「もしトラ」にも身構える。

バイデン米大統領(左端)に輪島塗のコーヒーカップなどを贈る岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
バイデン米大統領(左端)に輪島塗のコーヒーカップなどを贈る岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
米バイデン大統領(左)に贈呈品を渡す岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
米バイデン大統領(左)に贈呈品を渡す岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
「もしトラ」を巡る構図(写真はAPなど)
「もしトラ」を巡る構図(写真はAPなど)
バイデン米大統領(左端)に輪島塗のコーヒーカップなどを贈る岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
米バイデン大統領(左)に贈呈品を渡す岸田首相=9日、米ワシントンのホワイトハウス(内閣広報室提供、共同)
「もしトラ」を巡る構図(写真はAPなど)

 ▽成功体験
 「能登半島地震で被災した若手職人に、特別に心を込めて制作してもらった」。9日夕、米ワシントンのホワイトハウス。首相はバイデン氏に輪島塗のコーヒーカップとボールペンを贈った。その後、夕食を共にするレストランへ移動する際に同じ車に乗り込むと、笑顔を浮かべたツーショット写真をそれぞれX(旧ツイッター)に投稿。親密ぶりをアピールした。
 裏金事件の直撃を受け、内閣支持率が20%台に沈む首相には忘れられない成功体験がある。昨年5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)だ。
 直後の共同通信世論調査で、首相の地元広島での開催や首脳らによる原爆資料館視察を巡り「意義があった」との回答は70%超となった。首相周辺は「今度はバイデン氏から厚遇される姿を見て、悪く思う日本人はいないだろう。局面転換へプラスに働く」と見込む。
 対中国を巡っても首相は成果を得られそうだ。共同声明では沖縄県・尖閣諸島周辺で威圧的行動を取る中国を名指しで批判。米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条を尖閣諸島にも適用すると明記した。政府関係者は「会談結果は中国も注視している」と抑止効果に期待を寄せる。
 ▽メッセージ
 11月の米大統領選ではバイデン、トランプ両氏の激戦が予想される。今回、首相はバイデン氏との関係を強めたが、政府筋は「当然『もしトラ』を想定した対応も考えている」と明かす。
 一つは、11日に予定する米連邦議会の上下両院合同会議での首相演説。未来に向けた日米関係の在り方を訴える予定で「党派を超え同盟の重要性をインプットする機会とする」(周辺)狙いだ。
 ノースカロライナ州訪問もトランプ氏が念頭にある。同州にはトヨタ自動車が車載用電池工場を建設中で、投資額は累積で139億ドル(約2兆1千億円)。ホンダの米子会社も小型ジェット工場を構える。
 米国の利益を最優先するトランプ氏に「日本は米国の雇用に貢献している」(官邸筋)とのメッセージが伝わると踏む。
 ▽未知数
 一方、バイデン氏は党派対立が先鋭化する米議会の対応に頭を悩ませる。とはいえ議会内では、日米同盟が「最も重要な同盟」(ハガティ上院議員)との認識が超党派で定着し、深化を望む声は強い。首脳会談の成果が好感されると期待する。
 同時に、バイデン政権はトランプ氏再登板を阻止できなかった場合、安保環境が後退しかねないとして備えを進める。外交安保担当が力を注ぐのが、バイデン氏が再構築した同盟国との枠組みの維持で、日本との連携強化もその一環と言える。
 だがトランプ氏の「米国第一主義」に歯止めをかけられるかどうかは未知数だ。枠組みの「制度化」を推進するキャンベル国務副長官も「米国の政治は孤立主義的、ナショナリズム的な傾向がある」と述べ、作り上げた制度が覆される可能性を認める。
 ある米政府職員は「トランプが返り咲いたら職を辞する。彼にはついてはいけない」と硬い表情で語った。(ワシントン共同)

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