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【自民党派閥裏金事件】特捜部、脱税と判断せず 税務調査に解明期待も

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、議員側に還流された販売ノルマ超過分は課税対象で、脱税に当たるとの追及が国会で続いている。市民団体からは脱税容疑での立件を求める声が上がるが、東京地検特捜部は議員側の使途を捜査した上で非課税の政治資金だと判断。議員側を所得税法違反に問うハードルは高い一方、国税当局の調査に実態解明を期待する声も上がる。

東京地検特捜部による自民党安倍派事務所への家宅捜索の様子=2023年12月、東京都千代田区
東京地検特捜部による自民党安倍派事務所への家宅捜索の様子=2023年12月、東京都千代田区
横断幕を掲げる市民団体のメンバーら=7日、東京都千代田区
横断幕を掲げる市民団体のメンバーら=7日、東京都千代田区
自民党裏金事件の構図
自民党裏金事件の構図
東京地検特捜部による自民党安倍派事務所への家宅捜索の様子=2023年12月、東京都千代田区
横断幕を掲げる市民団体のメンバーら=7日、東京都千代田区
自民党裏金事件の構図

 ▽無罪放免
 「市民には増税、裏金議員は無罪放免なのか」。東京都千代田区の国税庁前で7日、数十人が声を張り上げた。デモを呼びかけた市民団体は2月、還流金を受領した安倍派議員の一部について、所得税法違反容疑で東京地検に告発状を出したが、検察側は「容疑事実の記載が不十分」として団体側に戻したという。
 特捜部は1月、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で衆院議員池田佳隆被告ら10人を立件。派閥から還流を受けた安倍派議員らは、還流金を除外した収入を関連政治団体の収支報告書に記入したとする起訴内容で、脱税での訴追はなかった。
 ▽飲食や旅行でも
 還流金は政治活動に使われていれば課税されないが、議員個人に帰属する所得とみなされれば課税される。野党は還流金は個人の収入に当たると訴え、岸田文雄首相に納税を促すよう求めている。
 捜査関係者によると、特捜部は還流金の多くが事務所経費や政治家同士の飲食代などに充てられ、政治活動の範疇だと判断した。領収書のあるケースは少なかったが、事務所関係者への聴取などから裏付けを進めたとみられる。
 政治活動は従来、幅広く認められてきた。このため、使途が飲食や旅行でも「国民の意見を聞くため」との説明が通るのが実情だ。捜査関係者は「脱税かどうかの議論は終わっている。個人の所得は発生していない」と語る。特捜部は安倍派の還流金について、収支報告書に記載していた他派閥と同様、議員の関連政治団体への寄付に当たり、それを記載しなかった事件として処理した。
 ▽第三者のチェック
 所得税法違反容疑での告発状を提出した市民団体は今月7日、還流金への課税を求める申し入れ書を国税庁に出した。市民団体の代理人長谷川直彦弁護士は記者会見で「(還流金を記載しなかった議員は)政治団体ではなく個人の収入だと思ったから、政治資金の届け出をしなかったのではないか。慌てて収支報告書を訂正し、政治資金として扱われるのはあり得ない」と主張した。
 青山学院大の三木義一名誉教授(税法)は「庶民は金の流れに疑いがあると徹底的に追及される。政治家の使い道に疑義が生じている以上、国税当局が使途を調査し公表することが国民の声に応えることになる」と指摘する。検察幹部は「国民の疑念を払拭するには、第三者が政治資金の使途をチェックする仕組みが必要だ」と話した。

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