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【グロッシ氏来日】再稼働や除染土処分支援も 政府、IAEAに期待

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が来日の全日程を終えた。東京電力福島第1原発の処理水放出では、放出前から積極的に関与する姿勢を示し、国内外での一定の理解獲得に貢献した。政府は次の難題となる除染廃棄物の再利用や処分、東電柏崎刈羽原発(新潟県)再稼働でも支援を期待。“IAEA頼み”を強める。

原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
IAEAの日本での主な取り組み
IAEAの日本での主な取り組み
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
原子力産業関係者のシンポジウムであいさつするIAEAのグロッシ事務局長=14日午後、東京都内
IAEAの日本での主な取り組み

 ▽ターニングポイント
 「(処理水は)われわれの期待に沿った形で運用されている。大変満足だ」。13日、福島第1原発の視察を終えたグロッシ氏は記者団に語った。この日は福島県で漁業者らとの会合や高校生との対話に出席。14日は東京都内で、原子力産業関係者のシンポジウムに登壇した。原子力を再評価する機運が高まっているとし「皆さんに寄り添い、新しい時代を切り開きたい」とあいさつすると、会場は拍手に包まれた。
 グロッシ氏はアルゼンチン出身の63歳。外交官として核軍縮に携わり、天野之弥前事務局長の死去に伴う2019年のIAEA事務局長選で南米から初選出された。
 昨年7月にも来日し、東電の処理水放出計画が「国際的な安全基準に合致する」とする報告書を政府に提出。福島県の自治体や漁業関係者に「最後の1滴が安全に放出されるまでIAEAは福島にとどまる」と表明し、放出開始決定のターニングポイントになった。
 ▽国民理解
 政府の次の焦点が、福島県内の除染で出た土などの廃棄物の再利用や処分だ。第1原発周辺の中間貯蔵施設に約1400万立方メートル(東京ドーム11個分)を搬入。法律で定める45年3月までの県外搬出や最終処分のため、放射性物質濃度が低い土を全国の公共事業で再利用し量を減らす計画だが、反発は強い。
 政府は自らの計画の評価、助言をIAEAに依頼。今夏にもまとまる専門家会合の報告書を踏まえ、取り組みを加速させたい考えだ。計画を所管する環境省の幹部は「処理水放出を参考に進めていきたい」と話し、IAEAの関与による国民理解の拡大を思い描く。
 ▽客観性
 IAEA頼みは事故対応にとどまらない。12日、グロッシ氏と面会した斎藤健経済産業相は「(事故後)10年以上の空白で、原子力の産業基盤は危機に直面している」と業界への協力を求めた。
 東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発は、テロ対策の不備による事実上の運転禁止命令が昨年12月に解除されたが、地元の不信感は強い。グロッシ氏は「われわれも支援を惜しまない」と言及。東電の要請を受け、近く専門家チームが改善状況を調査する。
 こうした姿勢に疑問の声も上がる。福島大の小山良太教授(農業経済学)は、国外の関心が高い処理水放出と異なり、除染土や原発再稼働は国内の問題だとし「IAEAには処理水だけ評価してもらった方が、客観性を保てるのではないか」と指摘した。

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