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【日韓大陸棚】共同開発協定の対応注視 韓国、期限迫る九州沖海域

 日本、韓国両政府の間で海洋資源の共同開発の権限を定め、1978年に発効した「日韓大陸棚南部協定」の期限を巡り、韓国が日本の対応を注視している。2028年に期限を迎えるのを前に、日本側は終了や見直しを意味する「再交渉」に言及。交渉次第で、日本が現在の共同開発区域で大半の開発権益を握る可能性がある。改善した日韓関係を背景に、新たな火種に発展しないよう両国は互いの出方を探る。

1978年6月、日韓大陸棚に関する協定の批准書を交換する園田直外相(右)と金永善駐日韓国大使=外務省
1978年6月、日韓大陸棚に関する協定の批准書を交換する園田直外相(右)と金永善駐日韓国大使=外務省
日韓大陸棚南部協定における共同開発区域
日韓大陸棚南部協定における共同開発区域
1978年6月、日韓大陸棚に関する協定の批准書を交換する園田直外相(右)と金永善駐日韓国大使=外務省
日韓大陸棚南部協定における共同開発区域

 ▽変化
 協定は、石油や天然ガス産出の可能性がある九州南西沖の海域を「共同開発区域」に設定。経済性などを理由に現在まで本格的な開発には至っていないが、掘削技術の進歩により将来開発が進むとの見方は根強い。
 韓国側が日本の対応を注視する背景には、海洋の境界画定に関する国際法の変化がある。協定締結当時は大陸棚に沿って境界を決める考え方が国際法上の主流で、共同開発区域は日韓の地理的な中間線の日本側に設定された。
 現在は国連海洋法条約や国際判例に照らし、大陸棚ではなく中間線を基に等距離で線引きする傾向にある。仮に再交渉に入れば中間線に基づき協議が行われ、日本の開発権益が拡大する公算が大きいとされる。
 ▽危機感
 2月9日、衆院予算委員会。無所属議員に再交渉の方針を問われた上川陽子外相は「再交渉も含め、諸般の事情を総合的に判断して適切に対応する」と答弁。国際法の通説の変遷にも触れ「中間線に基づいて境界を画定することが衡平な解決になる」と強調した。
 この答弁に韓国メディアが反応した。聯合ニュースは「問題に関心が集まった」。ソウル新聞は「日本が開発権限を独占する方向で交渉し得るという意味で、新たな紛争になる」と危機感をあらわにした。
 ▽静観
 協定は25年以降、一方が終了を通告しなければ28年の期限後も自動更新される。共同開発権益の縮小を警戒する韓国は、現協定の維持を働きかけるとみられる。
 韓国外務省は共同通信の取材に「これまでさまざまなレベルで日本側と継続的にやりとりするなど、多角的な外交努力を続けてきた」と回答。水面下での交渉をうかがわせるが、日本外務省関係者は「満了まで数年残しており、何の方針も決めていない」と静観の構えだ。(共同=光山正一)

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