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【衆院政倫審】安倍派裏金またもや闇 「期待外れ」自民も不満

 自民党安倍派の裏金づくりの実態はまたもや闇に包まれた。資金還流が復活した核心に関し何か語るのではないか―。衆参政治倫理審査会で先に弁明した幹部3人と距離のある下村博文氏に対しては、そんな見方があった。ところがふたを開ければ「知らぬ存ぜぬ」のオンパレード。「期待外れだ」。自民内ですら不満が残る中、岸田文雄首相は幕引きを急げと言わんばかりに処分へ動く。

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で弁明する下村博文氏(左奥)=18日午後
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で弁明する下村博文氏(左奥)=18日午後
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で質問を聞く下村博文氏(左奥)=18日午後
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で質問を聞く下村博文氏(左奥)=18日午後
2022年8月5日の安倍派幹部協議に出席した4人の弁明
2022年8月5日の安倍派幹部協議に出席した4人の弁明
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で弁明する下村博文氏(左奥)=18日午後
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院の政治倫理審査会で質問を聞く下村博文氏(左奥)=18日午後
2022年8月5日の安倍派幹部協議に出席した4人の弁明

 ▽注目の証言
 「誰が最初に言ったのかは覚えていない」。18日、衆院第5委員室。下村氏は、2022年8月5日の安倍派幹部協議のやりとりを問われると言い放った。
 安倍派では22年4月に会長の安倍晋三元首相が還流中止を指示。しかし安倍氏死去後の8月、派閥パーティー券をノルマ以上に販売した議員側から還流復活要求が上がった。幹部協議で、派閥が議員個人のパーティー券を購入する形で戻す案が出たとされるが、これまで弁明した塩谷立氏ら幹部3人は誰も提案者を明かさず、復活の経緯も不明のままだった。
 そのため安倍派会長代理だった下村氏の証言が注目されたものの、下村氏は「承知していない」「慣行にのっとり還流された」と述べるのみ。質問に立った自民の井出庸生氏は「国民の納得が得られるのか大変疑問だ」と苦虫をかみつぶした。
 ▽パンドラの箱開かず
 自民の内部調査の報告書は「安倍派の政治資金収支報告書への不記載は20年以上前から行われていたとうかがわれる」と記した。事実なら森喜朗元首相が会長だった時期と重なる。下村氏は、森氏と確執があるとされるため「内幕を暴露するのではないか」と期待含みで見られていた。
 だが下村氏は裏金の発端を「確定的にいつからとは分からない」と強調。派閥運営への森氏の関与を引き出し、国会招致につなげようとの野党の思惑にも乗らず「全く承知していない」と守りの答弁に徹した。立憲民主党幹部は「パンドラの箱は開かなかったな」と渋い顔だ。
 国対筋によると、下村氏は事前に自民幹部に対し「今後の検察審査会の審査もあるので、検察の聴取に答えた以上のことは言わない。森さんの件を聞かれても何も言わない」と伝えていたという。政倫審を乗り切った下村氏は記者団を前に余裕を見せた。「きちっと説明させてもらった」
 ▽消えた「火の玉」
 「不記載の金額や程度、役職などの議員歴、説明責任の果たし方を勘案し、厳しく対応する」。18日夕、首相は自民役員会で安倍派幹部らの処分に言及した。周辺は「政倫審で一区切りついた。一拍置いて次は処分だ」と解説する。
 党として安倍、二階両派の議員計80人規模を4月上旬にも処分する方向で調整に入る。
 もっとも処分の前提となるはずの真相究明はほとんど進んでいない。18日の参院予算委員会では立民の福山哲郎氏が、自民の調査で11人も不記載を認識していたのに「安倍派幹部だけ知らないのはおかしい」と首相をただした。共産党の小池晃書記局長も「うそをついたら偽証罪に問われる証人喚問が必要だ」と追及続行を宣言する。
 先週、自民による森氏の追加聴取の可能性にも触れた首相。説明責任をさらに果たすよう指導力を発揮する気は本当にあるのか。17日の党大会では「政治改革を断行する」と意気込んだが、昨年持ち出した「火の玉になる」との表現は消えた。
 苦境を見て取った自民重鎮は皮肉る。「実態は、裏金克服と信頼回復に『火の車』だな」

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