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【ジャニーズ性加害の補償】「法を超えた救済」の行方 最終的な解決は見通せず

 前例がないほど多数に及ぶ故ジャニー喜多川氏の性加害。「法を超えた救済」を表明した旧ジャニーズ事務所(SMILE―UP.、スマイルアップ)は、15日時点で287人に補償金を支払った。担当者は「明確な物的証拠がなくても補償を進めている」と柔軟な対応を強調するが、中には「提示額は壊れた人生にとても見合わない」と思い悩む被害者も。最終的な解決はいまだ見通せない。

上谷さくら弁護士
上谷さくら弁護士
旧ジャニーズ事務所(東京)を背景に、性加害問題で記者会見した同事務所の東山紀之社長のコラージュ
旧ジャニーズ事務所(東京)を背景に、性加害問題で記者会見した同事務所の東山紀之社長のコラージュ
上谷さくら弁護士
旧ジャニーズ事務所(東京)を背景に、性加害問題で記者会見した同事務所の東山紀之社長のコラージュ

 スマイルアップによると、15日時点で補償受付窓口に被害を申告したのは計968人に上る。元裁判官の弁護士で構成する「被害者救済委員会」との面談を経て、うち370人に補償内容を通知し、320人が合意した。一方で2月末までに、在籍も被害も確認できないと結論付けた43人に対し補償を行わないと通知している。補償額は「被害者の多くは公表を望んでいない」として非公表だが、関係者によると、数百万円や1800万円が提示された例がある。
 採用時に契約を締結しないなど旧事務所の管理体制がずさんだったこともあり、在籍記録が残っていない被害者も多い。担当者は「救済されるべき人が救済されるよう、人的リソースをかけ被害の見極めに一番注力している」と説明。確認が難しい申告者には、当時の雑誌記事など追加の資料提出を求める他、現役タレントの証言と突き合わせることもあるという。
 同社によると、順調にいけば現在の申告分は、4月半ばまでに1度目の対話や補償内容の通知ができるとする。まだ被害を申告できていない人が申し出られる状態を保つため、現時点で窓口を閉める予定はないという。
 被害者の心のケアや対話も課題だ。同社によると、「直接の謝罪の場」として、今年3月上旬までに東山紀之社長が、希望する60人以上と個別に面談したという。担当者は「メンタルケアの仕組みは継続して提供したい」と説明する。
 だが、提示額を受け入れられない被害者もいる。ある男性は「性被害で毎日が一変し、夢も諦めた。それがなければ違う人生もあった」と漏らす。精神的苦痛から体調を崩しているといい、「こういう苦しみも本当に分かってもらえているのか」と疑問を抱く。
 補償の現状について、性犯罪被害者支援に取り組む上谷さくら弁護士は「過去に例がない規模と考えると、スピード感をもって進めている」と一定の評価をしつつも、「被害者の心身の状態には個人差があるので早くなされればよい、というわけではない」と指摘。
 被害確認が難しいケースについては「提供できる情報や、話すまでにかかる時間は個人差があるので丁寧に向き合っていく他ない」としている。

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