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【公示地価3年連続上昇】新幹線、企業立地がけん引 過疎地は反転見通せず

 3年連続プラスとなった2024年の公示地価は、好調だった都市部だけでなく、地方にも上昇の波が広がった。新幹線開業や大手半導体メーカーの立地などで開発が進み、けん引した。一方、災害の被災地や過疎化が進んで下落が続く地域は、上昇に転じる道筋が見通せない。

公示地価が大幅に上昇した福井駅周辺。再開発が相次ぎ、高層複合ビルが建つなど街並みが大きく変化した=22日、福井市
公示地価が大幅に上昇した福井駅周辺。再開発が相次ぎ、高層複合ビルが建つなど街並みが大きく変化した=22日、福井市
公示地価地点別の変動事例
公示地価地点別の変動事例
公示地価が大幅に上昇した福井駅周辺。再開発が相次ぎ、高層複合ビルが建つなど街並みが大きく変化した=22日、福井市
公示地価地点別の変動事例

 ▽好循環
 16日に延伸開業した北陸新幹線の福井駅周辺の地点は前年比8・3%と大幅に上昇した。再開発が相次ぎ、ホテルや飲食店が入る高層複合ビルが建つなど数年で街並みが大きく変化した。
 福井市の担当者は「新幹線効果で人の流れが一気に増え、再開発で立ち寄り先も充実した。空き店舗への出店など好循環も期待できる」と鼻息が荒い。
 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県菊陽町は、関連企業の増加とともに従業員向けの住宅需要が高まったが、供給は限定的で13・3%上昇した住宅地もある。
 次世代半導体の国産化を目指す「ラピダス」が新工場を建設中の北海道千歳市でも需要は旺盛だ。新千歳空港に近く、上昇に拍車がかかっている。
 国土交通省幹部は「主要都市以外の地方圏は用地が比較的安く、交通アクセスの良さなど武器があれば企業の狙い目になる」と話す。
 ▽急増
 都道府県庁がある46市と東京特別区で平均がプラスだったのは、住宅地が前年の32から39、商業地が38から45に増えた。国交省は「都市中心部は住環境に優れた地域の需要が堅調で、オフィスの引き合いも底堅いことを裏付けた」とみる。
 商業地は観光面の貢献が大きい。青森県は平均で0・1%下落だが、青森市は32年ぶりに上昇に転じた。地元不動産関係者は「クルーズ船の寄港や、青森ねぶた祭の4年ぶり通常開催などで国内外から客足が伸びた」と分析する。
 中心市以外でも、島根県出雲市で飲食店や土産店が集まる出雲大社近くの上昇率が0・7%から3・3%に広がった。観光客を目当てとする出店数の増加が要因で、今後も上昇を維持しそうだ。
 別荘地も好調だ。北海道富良野市や長野県白馬村は外国人を中心に人気が高まっている。長野県軽井沢町では「新型コロナウイルス禍を機に首都圏からの移住やリモートワークの希望者で住宅需要が急増した」(長野県の不動産鑑定士)。
 ▽共通項
 住宅地、商業地それぞれ下落率が高い10位までの計20地点を見ると、一部地域に集中している。愛知県南知多町が計6地点、石川県珠洲市が計4地点、宮城県大崎市が計2地点など人口減少や高齢化の進行が共通項だ。
 珠洲市は22年から続いた地震で住宅需要や経済活動が停滞。5・4%下落した大崎市の鳴子温泉地区は「高齢化に伴う個人商店の閉店、旅館の休廃業が続いている」(地元関係者)。
 65歳以上の高齢化率が23年末時点で40%に達した南知多町で不動産業も手がける「大喜工務店」の山本多恵さんは「就職や進学による若者の流出が止まらない」と嘆く。ただ、安い土地や中古住宅を購入する動きもあるといい「空き家の有効活用などが少しでも進めばいい」と話した。

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