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【トヨタ佐藤体制1年】好業績もグループ不正続発 EV開発「ぶれず進める」

 トヨタ自動車の佐藤恒治社長(54)が就任から1年を迎えた。車の魅力向上を重視する豊田章男会長(67)のスタイルを受け継いだ上で、出遅れた電気自動車(EV)の巻き返し戦略を発信。業績は過去最高を見込み、株価は好調だ。世界のEV需要は失速感もあるが「ぶれることなく着実に進める」と語る。一方、グループで頻発した不正の対処や謝罪に追われ、持ち前の笑顔を見せる場面は減った。

ジャパンモビリティショーで話すトヨタ自動車の佐藤恒治社長=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
ジャパンモビリティショーで話すトヨタ自動車の佐藤恒治社長=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
トヨタ自動車「レクサス」の次世代EVのコンセプトモデル「LF―ZC」=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
トヨタ自動車「レクサス」の次世代EVのコンセプトモデル「LF―ZC」=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
報道陣の取材対応を終え、一礼するトヨタ自動車の佐藤恒治社長=1月、東京都文京区
報道陣の取材対応を終え、一礼するトヨタ自動車の佐藤恒治社長=1月、東京都文京区
トヨタ・佐藤恒治社長の1年
トヨタ・佐藤恒治社長の1年
ジャパンモビリティショーで話すトヨタ自動車の佐藤恒治社長=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
トヨタ自動車「レクサス」の次世代EVのコンセプトモデル「LF―ZC」=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト
報道陣の取材対応を終え、一礼するトヨタ自動車の佐藤恒治社長=1月、東京都文京区
トヨタ・佐藤恒治社長の1年

 ▽アクセル
 佐藤氏は約13年社長を務めた豊田氏から2023年4月にバトンを受けた。世界各地の電源事情や需要に対応した多様な車をそろえる「全方位戦略」を堅持。中でも「ミッシングピース(足りない部分)」のEVは、特に開発を推進すると表明した。
 新体制は発足直後、22年に年間2万台強だったEV販売を26年に150万台へ引き上げる計画を公表。豊田氏が示していた「30年350万台」に向け、いよいよアクセル全開かと注目された。
 昨年10月のジャパンモビリティショーでは、26年投入予定の次世代EVを初披露。満充電での航続距離は千キロで、車内空間の広さも特長だ。性能向上につながる「全固体電池」を27~28年に実用化する目標も示した。
 EV需要は一巡し、足元ではハイブリッド車が再評価されているが、佐藤氏は1日の取材で「環境が大きく変わったとは認識していない」と強調。この1年で「戦う準備が進んだ」と手応えを口にした。
 23年のグループ販売台数は1123万台と4年連続で世界一に。24年3月期の連結純利益は日本の製造業史上最高の4兆5千億円と見込む。時価総額は3月、日本企業で初めて60兆円を超えた。
 ▽ブレーキ
 ただ悪材料も多かった。完全子会社のダイハツ工業は昨年12月、車の量産の前提となる認証手続きで174件の不正があったと発表。豊田自動織機でも自動車用エンジンの不正が発覚した。
 トヨタでは品質維持が課題となり、佐藤氏はフル稼働してきた生産や開発のスローダウンを決断。成長にあえてブレーキをかけ、24年度は10年先を見据えた足場固めに取り組む考えを示した。
 豊田氏は1月末、先頭に立ってグループの風土改革に取り組むと表明し、対外発信で変わらぬ存在感を示す。2日には新体制の1年を「大変良くやっているんじゃないか」と評価。「どうしても私が目立つが、彼らがつくり上げる商品に注目してほしい。邪魔をしないよう心がけ、バックアップしていく」と語った。
 課題は、大統領選を控える米国、競争が激しい中国の二大市場での立ち回りだ。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「今年に入って米国で車の値引き(競争)が出てきており、人件費も上昇している。米国で利益が出せるかどうかが焦点になる」と話す。真価が問われる2年目に入った。

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