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【旧統一教会に過料】争点重複、文科省に追い風 解散命令へなおハードル

 文部科学省の質問権行使による調査に回答拒否を繰り返した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、東京地裁は26日、過料を科す決定をした。主要な争点が解散命令請求と重なり、注目を集めた司法判断。教団側主張の大半が退けられ、解散命令を最終目標とする文科省には追い風となるが、立証のハードルは過料の審理よりも高い。

旧統一教会を巡る司法手続きの主な争点
旧統一教会を巡る司法手続きの主な争点

 ▽前哨戦
 「民法の不法行為は法令違反行為に含まれる」「質問権行使が違法とする主張は採用できない」。地裁決定文には、文科省の主張に沿った判断理由が並んだ。
 過料は刑罰ではなく、金額は10万円で、教団の規模から見れば制裁効果は小さい。それでも文科省と教団がこの裁判を重視してきたのは、並行して審理される解散命令請求の前哨戦と位置付けられるからだ。
 宗教法人法は、解散命令につながる法令違反が疑われる場合に質問権行使を認める。過料の審理では「法令違反」に、高額献金など「民法の不法行為」が含まれるかどうかがポイントだった。
 文科省の主張に、教団側は質問権行使と解散命令請求の根拠は「刑罰法令違反に限られる」と反論。並行する裁判手続きに共通する争点とした。
 昨秋に過料を科すよう申し立てられた後、教団側の弁護士は記者会見で「(文科省は)全く話にならない」と自信を見せた。ただ26日の地裁決定は、教団主張の骨格を揺るがす内容となった。
 ▽同じ裁判長
 過去に法令違反を理由に裁判所が解散を命じたのは2件。地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と、霊感商法詐欺事件があった明覚寺(和歌山県)で、いずれも教団幹部が刑事事件で有罪判決を受けた。
 旧統一教会には献金などを巡る民事訴訟で賠償を命じられた判決はあるが、幹部の刑事責任が問われた例はないことが強気の背景だった。ただ「民法の不法行為は解散事由に入らない」と明文化した司法判断があるわけではなく、政府は2022年に「解散事由に入る」と解釈を変更した。
 「もし過料で負ければかなり不利になる」。今年に入り、先行きを案じる教団関係者もいた。二つの手続きを担当する裁判長は同じ人物で、解釈は解散命令請求でも踏襲されるとの見方が強い。
 ▽二重の歯止め
 だが、このまま一気に進むのかは見通せない。解散命令には法令違反の解釈に加え、文科省が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」を立証しなければならないからだ。
 法律は信教の自由への配慮から「著しく」と「明らかに」という二重の歯止めを設け、要件を満たすのは容易ではないと指摘する専門家もいる。
 文科省は(1)献金や物品販売の被害が長期間続いた(2)正体を隠した勧誘や悩みに乗じ不安をあおる手法が全国的に共通(3)信者の家族にも深刻な影響を与えた―などを総合し「組織性、悪質性、継続性」を立証したい考えだ。
 近畿大の田近肇教授(憲法学)は、信者による献金の勧誘などが宗教法人の業務の一部だと「評価する余地がある」とした決定内容に着目する。文科省側の主張が否定されず、組織性などについて実質的な検討が進むとみており「ここまで踏み込んだのは意外で、今後の判断に影響を与えるだろう」と指摘した。

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