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【原発再稼働へ同意要請】「同意」沈黙する新潟知事 複合災害に危機感強く

 東日本大震災後、全7基が停止中の東京電力柏崎刈羽原発は、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が21日、新潟県の花角英世知事に再稼働への理解を求めたことで、運転再開への議論が本格化する。政府と東電は地元の同意を求めて県への包囲網を狭めるが、花角氏は沈黙を続ける。胸中には、豪雪や地震などと原子力災害が重なった場合への危機感から、一歩でも踏み込んで地元に寄り添う姿勢を政府から引き出したい思惑があるようだ。

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、資源エネルギー庁長官との面会で発言する新潟県の花角英世知事(右)=21日、新潟県庁
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、資源エネルギー庁長官との面会で発言する新潟県の花角英世知事(右)=21日、新潟県庁

 「どこかの段階で結論を出す」。花角氏がこう述べたのは昨年5月の定例記者会見。その後1年近くにわたり、結論を出す時期や方法を示していない。他方、同県柏崎市と刈羽村では議会が再稼働を求める請願を採択。政府は世界的なエネルギー危機の中、脱炭素化や電力安定供給に早期の再稼働が欠かせないとの立場で、東電とともに年明け以降、地元政界、経済界への接触を水面下で加速させている。
 花角氏の沈黙について、近い関係者は「政府に出した道路整備の要望について回答を待つつもりではないか」と推し量る。県などは昨年7月、原子力災害時の避難路整備を政府に要望。実現はまだ見通せていない。
 また、「再稼働は国の政策であり、地元同意によって県に責任を負わせるようなやり方は本来おかしい」とくぎを刺す。別の関係者も「要望が通ればいいという話でもない」と話し、県民の不安を払拭するために政府がどう動くのかを見定めたいのではないかとみる。
 重要な避難路となる国道8号は、一昨年の大雪で車が38時間立ち往生し、能登半島地震では土砂崩れで通行止めになった。内閣府は今年2月、地元首長らを前に、自衛隊による除雪や地震対策の強化などを説明。しかし「自衛隊が全て解決してくれるというのは現実的とは思えない」(磯田達伸長岡市長)、「自宅で孤立した人はどう救助するのか」(中川幹太上越市長)など懐疑的な声が多かった。
 政府は同原発を巡って「国が前面に立って原子力の必要性や意義を丁寧に説明する」(岸田文雄首相)方針だ。首相周辺は「地元の理解を得るには時間がかかる」と解説。地震で得られた教訓を生かし、原子力災害の対応策を充実させる姿勢を示す考えで、現在の対策指針に盛り込まれている「屋内退避」の見直しにも着手した。ただ、地元には、新たな方針が示されるまでは同意するのは難しいとの見方もある。

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