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県知事も激怒、全県立高校生に配備のタブレット「3年もたず半数超が故障」の異常 後手に回る教育委員会、中国メーカーからは返答なし

 徳島県の県立高校などに「1人1台」配備されたタブレット端末の半数を超える数が故障する異例の事態となっている。中国のパソコン会社「ツーウェイ」社製で、2020年度に徳島県教育委員会が1万6500台を調達し、21年4月から使い始めた。修理したり予備機を使ったりして対応しているが追い付かず、現在も数千台が不足する。正常な状態に戻るのは9月ごろになるという。一体何が起きているのか。(共同通信=別宮裕智)

バッテリーが膨張したタブレット端末(徳島県教育委員会提供)
バッテリーが膨張したタブレット端末(徳島県教育委員会提供)
徳島県庁で記者会見する後藤田正純知事=2023年10月30日
徳島県庁で記者会見する後藤田正純知事=2023年10月30日
徳島県立校のタブレット端末故障台数の推移
徳島県立校のタブレット端末故障台数の推移
徳島市の中学校で焼け焦げたような状態で見つかったタブレット端末(徳島県教育委員会提供)=2021年5月24日
徳島市の中学校で焼け焦げたような状態で見つかったタブレット端末(徳島県教育委員会提供)=2021年5月24日
四電工徳島支店=2024年3月1日、徳島市
四電工徳島支店=2024年3月1日、徳島市
徳島県監査委員による監査結果の紙
徳島県監査委員による監査結果の紙
バッテリーが膨張したタブレット端末(徳島県教育委員会提供)
徳島県庁で記者会見する後藤田正純知事=2023年10月30日
徳島県立校のタブレット端末故障台数の推移
徳島市の中学校で焼け焦げたような状態で見つかったタブレット端末(徳島県教育委員会提供)=2021年5月24日
四電工徳島支店=2024年3月1日、徳島市
徳島県監査委員による監査結果の紙

 ▽酷暑で?バッテリー膨張相次ぐ
 教育委員会によると、問題の端末はツーウェイ社の「UBOOK」という機種。学校のデジタル化を促進する文部科学省の「GIGAスクール構想」を受け、県教育委員会が国の交付金を活用して約8億円をかけ、県内の全県立高校など計30校に配備した。1台当たりの価格は4万8950円だった。
 教育委員会が故障の急増を初めて確認したのは昨年7月。厳しい暑さが原因とみられるバッテリーの膨張が各校で続出した。約850台の予備機を投入しても間に合わず、1台の端末を複数の生徒で共有するなどしてしのいだ。
 この時点で教育委員会は県の知事部局に代替機を確保するための予算措置の相談をしていなかった。担当者はこう説明する。「学校が夏休みに入ってしまい、故障台数の集計に時間がかかった。故障の全体像が見えてきたのが9月下旬だった」
 そうしているうちに、故障台数はどんどん増え続けた。教育委員会の対応が後手に回っていることは明らか。後藤田正純知事は10月30日に臨時の記者会見を開き、代替機を確保する予算措置を講じると表明。そして教育委員会を批判した。「任せておけない。対応がお粗末だったことをしっかり認めてほしい」
 ▽新たなトラブル、2年前に予兆も
 故障台数は11月27日には6301台となった。代替機6500台をリース方式で調達する費用7200万円を盛り込んだ補正予算案が11月30日に県議会で可決。今年3月末までに納入業者の無償提供も含めて7千台を調達し、新年度が始まる4月には1人1台が配備できる算段だった。
 だが1月下旬、充電後にバッテリーが1時間未満しかもたない新たなトラブルの報告があった。教育委員会は充電器に接続しながらであれば使用できるため、外付けバッテリーの確保などで対応できないか検討している。「最終的な不足数は見通せない…」。終わりの見えない対応に、教育委員会の担当者は落胆を隠さなかった。
 2月29日に開かれた県議会文教厚生委員会では委員を務める県議から、納入業者やメーカーの責任を追及すべきとの声が相次いだ。「3年ももたないのは異常事態。一般常識では損害賠償請求をする」「(家電店で)3年で6割くらいがダメになると言われたら買わない。感覚的にはリコール(のレベル)だ」
 ツーウェイ社の端末を巡っては、実は約2年前に予兆があった。2021年5月24日、徳島市の徳島県立城ノ内中学校で1台のタブレット端末が焼け焦げたような状態で見つかった。生徒が端末を授業で使うため、保管庫に行くと、黒いすすだらけになっていた。
 発火した疑いがあり、教育委員会が納入業者を通じて調査したところ、この端末のバッテリーに傷が見つかった。ツーウェイ社のHi10Xという機種だ。この際に、配備されている同機種の他の端末を調査したが、不具合は見つからなかったという。
 消費者安全法では、消費者に被害が生じる事故が起きた場合、自治体に対して消費者庁への通知義務を定めている。だが教育委員会は当時、連絡を怠っていた。今回のバッテリーの膨張が急増した問題を受け、昨年11月に連絡した。
 ▽仕入れ価格重視、選択肢なく
 今回の半数以上が故障したタブレットは、入札を経て四電工徳島支店(徳島市)が納入した。入札に参加したのは同支店のみだった。四電工が複数の代理店に調達を依頼したところ、想定する仕入れ価格に見合うのがツーウェイ社の製品のみだったと説明する。
 県の監査委員は2月公表の監査結果で、ツーウェイ社を「国内の納入実績の乏しいメーカー」と指摘し、「21年5月に県立中で同社の別機種の端末に不具合が生じた際、危機管理意識を持って一斉点検をすべきだった」と教育委員会の対応の甘さに疑問を呈した。21年の時点でUBOOKの機種を全てチェックしていれば、今回のような混乱は回避できた可能性があるというわけだ。
 問題を受け四電工は昨年11月、こんな見解を公表した。「教育現場の皆さまに多大なるご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます。一日も早く子どもたちが不自由なく学習機会を得られるよう、誠心誠意対応させていただきます」
 四電工にツーウェイ社製品を提案した代理店によると、昨秋に故障を巡る問題をツーウェイ社側に伝えたが、現在も返答はないという。
 ▽原因を調査、法的措置も検討
 後藤田知事は昨年10月の記者会見で、県の契約相手である四電工に対して損害賠償請求などの法的措置を検討することを示唆した。ある県幹部はバッテリーが1時間未満しかもたない新たな故障が見つかったことで「フェーズが変わった」と指摘する。
 県は現在、故障原因の詳細を調べている。幹部は、こう語気を強めた。「バッテリーの膨張だけであれば、酷暑が原因だったという見方もできる。だが別の故障が出てきたら、もともとの品質に問題があるという話になってくる。調査の結果次第だが、遅くならないうちに動き出さなければならない」

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